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天然ウナギはそんなに美味しいのか [限定・季節の食材]

今年の土用の丑の日は7月30日の日曜日。
江戸時代の発明家、平賀源内が夏になると旬の時期を過ぎて売り上げが落ちる
鰻屋から、今の時期に鰻が売れる宣伝文句(キャッチコピー)を考えて欲しい
と頼まれて「本日、土用丑の日」という広告を考えたところ、夏の疲れに鰻が
効くという尾ひれがついて鰻が売れる日になったとされています。



実際には夏の鰻は、鰻自身が夏痩せしているので、冬眠に備えて栄養を蓄えた
秋から冬の時期が鰻の旬だというのは鰻屋さんも認めていますから、スタミナ
が云々とかの宣伝文句はともかくとして、本当に美味しい鰻を食べたいならば
秋から冬の時期に食べるのが良いかと思います。


ウナギに限らず、天然モノ・養殖モノに関する食材についての話題はテレビで
よく取り上げられるみたいで、そのような番組では、ほぼ100%の割合で確実
に美味しいのは、やはり天然モノという結論になるみたいですが、本当に天然
の素材は絶対的に優れているのでしょうか?
なんて、そんな意地悪なことは考えたことはありませんか。

ウナギは、現在のところ完全養殖に成功していない水産資源の一つで、現実的
に生態が完全に解明されている生物ではありません。

大学や水産資源研究施設での研究レベルでは、採卵から孵化までの一連の繁殖
に成功してはいますが、商業ベースで活用できる段階には至っていませんので
養殖の出来ない魚種だと考えるのが妥当です。



養殖にあたって一番大きな問題点として挙げられるのが、成熟卵が入手不可能
ということで、卵がなければ当然、孵化・育成は出来ません。

現時点の推測では、ウナギの産卵場所としては世界最深の海底と言われている
マリアナ海溝とかフィリピン海溝などの深海という説が有力とされていて日本
や韓国、中国を出発したウナギはお腹の中で卵を成熟させながら、産卵場へと
向かうと考えられています。

ですから、日本の周辺で捕獲したウナギからは、成熟した卵を採卵することは
出来ないですし、川から海に出て深海へと向かうウナギを追跡して深い海の中
で捕獲するなんてことは物理的に不可能です。

そんなわけで、自然に孵化した稚魚(シラスウナギ)を捕獲して人工的に育成
する半養殖とも言える方法を取らなければならないのが現実ですので、厳密に
見れば、ウナギの養殖はクロマグロと同じく畜養ということになります。
ですから、出生にまでさかのぼれば全てのウナギは天然モノです。



ここで、本題に戻ります。
一般に養殖ウナギは、脂が強く皮が薄いと言われています。
見た目で比べると、天然モノよりも色素が薄く、背中側は黒よりは灰色に近く
お腹側は真っ白(天然は黄色っぽい)なのが養殖です。
養殖技術の進展によって、より天然に近いウナギが供給されてはいますが全部
というわけでもありませんので、あくまでも例の一つです。

天然モノが成熟するのには、冬眠を挟むので数年間の歳月が必要となりますし
過酷な自然と対峙しているため、身を守る意味から皮が厚くなり、余分な脂肪
がつく余裕はないということになります。

さて、この皮の厚い天然モノと皮の薄い養殖モノでは、どちらのタイプを多く
の人が美味しいと感じるのでしょうか?
ウナギ屋さんの意見などを聞いた限りでは、一昔前の人はともかくとして現代
の一般人には天然ウナギの皮は噛み切れないという見方があります。
※ゴムのようだという意見もあるようです。

天然モノの入手が難しいということで、名店と呼ばれるウナギ屋さんでも養殖
のウナギを使っているという実態がありますから、天然モノこそが一番という
風潮とはいえ、食通とされる人はともかくとして、一般の人には普段から流通
している食べなれた養殖モノの方が美味しいと感じるようになってきたという
ことになるのかも知れません。



ただ、誤解してはいけないのは、老舗のウナギ屋さんが使っているものは養殖
モノとは言っても、水やエサにこだわって、本当に丁寧に育成した、ある意味
オーダーメイドのようなウナギですから、一年中、温度を一定に保って可能な
限り早く出荷できるように育てたウナギとは違います。

他の魚種でも、コイやナマズ、ドジョウなどの川魚の場合は養殖の方が泥臭さ
がなく、美味しく感じると言われていますので、どんな食材を出された時にも
「これは天然モノですか、凄いですねェ、あっ!美味しいですねェ。」とただ
持ち上げるだけテレビレポーターの言葉を真に受けてはいけないと思います。

天然の素材を、確実な技で料理する料理人ならば、天然の良さを活かした調理
で美味しく仕上げられると思いますが、素人が川で釣ってきた川魚をそのまま
調理しても美味しくないのは想像がつくと思います。

天然モノが、どんな場合でも美味しいということはありませんと、個人的には
結論付けたいと思います。

なお、ウナギはご存知の方も多いように絶滅危惧種です。
釣り情報誌などの媒体でも、ウナギについては釣りの対象魚としては掲載する
ことはご法度なのか自粛なのかはわかりませんが、情報は制限されています。

人によって意見は様々かと思いますが、個人的には天然に限らず国産ウナギは
一年おきに禁漁にするとか、資源保護にもう少し比重をかけることが必要では
ないかと思います。偶数年はシラスウナギを含めて漁獲を禁止して、ウナギの
個体数を増やしていき、日本政府が得意な偽装をされていない統計を元にして
一定の個体数の増加が認められたら、禁漁期を二年に一回とか三年に一回まで
減らせば良いのではないかと考えます。

国産ウナギが調達できない年は、インドネシアとかアメリカ産のウナギを育成
するとか、なにか方法はあると思うんですよね。

ウナギを養殖する技術やウナギを調理する技術は世界に誇れるだけの力がある
と思うので、国産ではないウナギを国産と同等にはならないかも知れませんが
お客さんに自信を持って提供できるレベルにすることは出来るのでは?と少々
希望的観測も含めて思います。

ウナギの蒲焼を現世代だけの幻の食材に終わらせずに、日本の食文化の重要な
継承として次世代に繋げていくために、妥協点を探ることも大切なことの一つ
だというように思いますが、いかがでしょうか。


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そら

私はどちらかを選べと言われたら、養殖物を選びます。けど…これは本当にどちらかを否定するのではなく、価格と好みです。拘るというか、絶対に許さない!って頑張ってる方は少し柔軟に両方お召し上がりの上判断なさる方が良いと思っています。
食べ物では無いですけど、工業製品も海外でも日本でも、結局レベルの差がありますよね。中国の最高クラスの工場などは、ほんとに素晴らしい製品をお作りだと思います。
何にしても…この暑い夏、美味しいものを沢山食べて元気に乗り越えたいです。
by そら (2023-07-26 08:24) 

suzuran

そらさん:
コメントありがとうございます。

天然のうなぎは価格的に高いということはありますが、やはり絶滅が心配
されている以上、食べようとは思いません。クロマグロは畜養技術の向上
によって、絶滅危惧種から危急種だったかな?に一段階緩くなったので
保護すれば確実に個体数は増えるはずですからね。現世代で食べ尽くす
ということは止めるべきだと思います。

日本がとにかく最高品質だというのは間違っていると思います。
他国を貶めて最高だと言っている時点で恥ずかしい話ですよ。

女性が夏に食べるべき食材は豚肉と枝豆ですね。
前にブログで書いたかと思いますが、女性の健康に有意義な栄養素を
多く含んでいる食材です。

by suzuran (2023-07-27 00:10) 

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