初めての岩手県・遠野で民話体験 -6 [トラベル]
の菊池家の曲り家(厩舎と住居がL型に繋がっている遠野に特徴的な屋敷)や
遠野物語の語り部というか、柳田國男氏に伝承を伝えた佐々木喜善氏の記念館
オシラサマが千体安置されているオシラ堂などがあります。
レンタカーを返す時間も決まっているため、時間があまりなかったので、全部
を見ることは出来ませんでしたが、国の重要文化財に指定されている旧菊池家
のお屋敷とオシラサマの御蚕神堂は見ました。
伝承園の入口横には交通安全祈願の安全太郎という河童がいました。
母と子を守るだけでなく、交通安全も引き受けるとは河童さんご苦労様です。
曲り家は左側が厩で、右側が住居、右奥に見えるのが御蚕神堂です。
茅葺の屋根は草が生えるんですよね。だから数年ごとに葺き替えが必要になる
ということなのかは、よくわかりません。
明治以前に、この辺りを治めていたのは南部藩で、遠野で大きな屋敷を持つ家
では南部藩の馬を預かっていたために、馬と同じ屋根続きの家に住み、雪隠と
湯殿は外にあるという住む人からすれば不便な造りが標準だったようです。
湯殿は今の言い方をすれば浴室ということになりますが、家から距離はかなり
あるので、夏場ならともかく、真冬の雪深い時には呑気にお風呂に入るなんて
ことは到底出来なかったのではないでしょうか。
若い娘さんが一人で入浴なんて、別の意味で怖い感じです。
湯殿の中には、時代劇だと棺桶になりそうな風呂桶があって、意味ありげに娘
入浴中、絶対に覗かないでくださいの掲示がありました。
覗いて写真でも撮れば、それもまた一興かなとは思いましたが、わざわざ蓋を
してあるのに秘密を公開するのも失礼な話なので覗きませんでした。
中になにか仕掛けがあるかはわかりません。機会があったら確かめて下さい。
湯殿の隣には井戸があり、ここで水を汲んで湯殿まで運んでお湯を沸かしたと
いうことで、お風呂を沸かすだけでも相当の重労働な気がします。
江戸時代の人は毎日はお風呂に入りませんでした、と聞いたことがありますが
毎日、水を汲んで火を起こして、母屋から真っ暗な中をお風呂に入りに行くと
いうことを考えたら、面倒だなと思うのもわかります。
さらに奥には水車小屋かありました。
水の流れでゴットンゴットンと回っていて、精米(飢饉の多い地方なので米を
食べることが出来たのは毎食ではなかったかも知れませんね)や小麦や蕎麦を
挽くのに使ったのでしょうか。中に、木枯し紋次郎が隠れていそうでした。
雪隠(せっちん=トイレ)の写真も撮りましたが、さすがにトイレは現代風に
なっていないと、いろいろと面倒な苦情が出そうなので外見だけが昔風です。
厩の軒先には藁草履がかけられていましたが、馬が履くのか人間が履くのかは
今一つ分かりませんでした。現代の競走馬は蹄鉄を履いていますが、江戸時代
に蹄鉄を鋳造する技術があったのかもわかりませんので、深入りしません。
馬と人間が一つ屋根の下で暮らすという独特の様式が、オシラサマの伝説の元
になっているわけですが、冷静に聞くといわゆる獣姦のお話になります。
実際に遠野ではそのようなことがあったかも知れないという根拠になっている
のが、曲り家の造りと馬を大切にする風習のようです。
オシラサマの伝承
昔、あるところに貧しい農夫が住んでいました。農夫には妻はなく美しい娘が
一頭の馬を飼っていました。(この話は貧しい農夫の家なので曲り家ではなく
家の外に厩舎がありました)「娘此馬を愛して夜になれば厩舎に行きて寝ね、
終に馬と夫婦に成れり」ということで、娘は馬を愛して、夜になれば厩舎まで
行って馬と交わり、夫婦になった(馬と肉体関係になったということ)という
ことですが、ある日、こっそりと厩舎に行く娘の後を付けた父親は、馬と関係
する娘を見て、娘をたぶらかした馬に対して激怒し、馬を桑の木に吊り下げて
殺した挙句、馬にすがり付いて泣く娘の眼前で、斧で首を切り落としてしまう
という暴挙に出ます。すると娘は馬の首に乗って天高く舞い上がり、天界へと
行ってしまい、馬と娘はオシラサマという神様になったのでした。
という伝承が伝わっていて、桑の木で作った馬と娘が一対になったオシラサマ
が遠野の家々に伝わっているということです。
オシラサマ年に一度の小正月の晩に行われる「オシラ神祭り」で、遊ばないと
祟られるとか、かなり気難しい神様のようですが、目の神様とか養蚕の神様と
いった感じで家々で必要とされる神様として信仰されているようですが、現代
の遠野で、いくつぐらいの人にまで伝わっているかはわかりませんね。
オシラサマの伝承も貧しい農夫の場合もあれば、豪農の長者様の場合もあって
それぞれに語り伝えた話なので、それぞれの語り部によって設定が変わるのも
ありなんでしょう。というような話を書いていたら、また長くなりました。
曲り家の内部の話は、次回に持ち越しとさせていただきます。
朝顔に釣瓶とられて貰い水ではありませんが・・・
古いものには心に感じつ温かさがありますね。
by lamer2 (2023-06-21 10:50)
lamer2さん:
コメントありがとうございます。
数年に一度の葺き替えが必要な茅葺屋根も、山に行けばいくらでも茅が
手に入り、近所の人たちが手伝ってくれた時代なら個人の家として存続
させられたでしょうが、山里は整地され、人口減を止める術はない今の
時代に集落の人の応援をあてにすることも出来ないですからね。
古い建物、古い家財道具に温かみを感じても、それを身近にすることは
お金の面でも、継続性の面でも難しくなっているのが残念です。
by suzuran (2023-06-21 20:55)