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大人の社会見学 滋賀県編-2 [おとなの社会見学]

UCCの工場は事前に見学の予約は必要なものの身分証明書の提示までは必要
とされませんでしたが、次に行った国立印刷局は作っているものが日本銀行券
単純に言うとお札ですので、工場に入る時点で身分証明書の提示が必要な上に
かばんなどを持っている場合は中のチェックもある物々しさでした。

一部勘違いされている人がいるみたいですが、あの桜並木で有名な大阪造幣局
は名前の通り造幣(貨幣を作るのが仕事)なので、1000円札以上の紙幣は
製造していないので、お札は印刷局の仕事ということになります。

見学の予約段階で参加者全員の名簿を提出し、当日に参加者それぞれが身分を
証明できるものを持参して名簿と照合の上で見学者用の名札が貸し出されると
いう厳重な入門体制になっています。


始めに展示室に入り、国立印刷局の紹介映像を約30分観た後で実際に工場内
に入り、ガラス越しに作業工程を見るという順路になり、最後に展示室に戻り
展示室内の自由見学をして終了ということになります。

建物はそれなりに老朽化していて廊下の壁にクラック(ひび割れ)もあったり
しますが、セキュリティ面ではかなり厳重で防犯カメラは建物の内外にかなり
狭い感覚で設置されていますし、見学者の列の前後にも職員が数人配置されて
工場内全体を見られるガラス張りの見学場所に着くと、その場で職員が見学者
の人数をカウントしていました。

工場内は整然としていて音も静か、印刷工場のイメージの音はありません。
インキの臭いはしますが、工場内の温度は低めに保たれているようで働く環境
としては悪くないように感じました。

一万円札は印刷時には一面に20枚印刷され、その用紙を500枚重ねて一気
に断裁されるので、一回の断裁と梱包によって一億円の束が出来ます。
フロアの台車にまとめて積まれているのが梱包された一万円札で台車一台には
10包積まれていますから、台車一台が10億円になります。
あまりにも普通に置かれているので現実感がありませんけどね。

約15分程、工場内の見学をして展示室に戻る際、廊下に出る際に一度全員が
止まって再度人数の確認をして全員が揃っていることを確認してから移動して
工場内に人が残ることがないように万全の態勢を敷いています。

特殊なオフセット印刷をした上に、ホログラムシールを貼付(シールを貼ると
いうよりも熱と特殊技術で付けられているので、シールは剥がれません)した
印刷物なので同じ手触り、風合いの偽札を作るのは不可能らしいです。

紙幣用の紙は外注ではなく印刷局で製紙され、印刷用のインクも内製化により
原材料から完成品までを全て内製化されているので、全く同じものを再現する
ことは不可能だと思われますし、お札の中にいろいろな隠し文字のような微細
な印刷もあるのでカラーコピーでそれっぽいものは作れても普通に触れば感触
で偽札だというのはわかるでしょうね。

印刷機の中に紙詰まりすることは滅多にないみたいですが、微妙な印刷のズレ
などは発生するので、そういう失敗したものはまとめて細かく裁断されてゴミ
として出されますが焼却ではなく薬品で溶解して再生紙の原料になります。

日本銀行券として市中に流通したお札は、紙ですからどうしても悪くなるので
千円札で1-2年、万円札で4-5年で新品と交換する形で回収され、失敗品と
同じように裁断され再生紙になるみたいですが、紙幣用の紙は特殊なインキを
使ってあったり磁気を帯びるようにしてあるためトイレットペーパーにしても
肌触りが悪くなるようなので、再生トイレットペーパーで肌触りの悪いものは
元々は一万円札だったかも知れません。

このようにお札は耐用年数が少ないので製造年が入っていませんが、一円玉を
はじめとした硬貨の場合は何十年も使えるので製造年が入っています。
ちょっとしたクイズに仕えそうなネタですね。

この工場見学の時には他に高齢者の社会見学だったのか、定年後の方々かな?
みたいな人のグループが一緒で、その方々も質問していたのですが、一万円の
原価はいくら?という質問がよくあるみたいです。

以前は名前の通りの国立印刷局で、財務省の直轄組織だったのでお札の原価に
ついても開示されていましたが、現在は行政改革により独立行政法人になった
ために日本銀行からの受注に対して製品を出荷する独立採算制のため、原価は
守秘事項になっているのでお答えできないそうです。

現時点でお札とパスポート、官報、郵便切手の印刷を受注していますがすでに
切手については、民間業者との競争入札で受注を取らなければならない状況に
あり、コストが高い印刷局は民間業者になかなか勝てないみたいなので、商品
の原価は公表していないのだそうです。

今後はさらに電子マネーやクレジットカードが主流になりそうで、お札を印刷
して日本銀行に製品として納める仕事は徐々に減っている状況なので、皆さん
現金での支払いをよろしくお願いしますと言っていました。

キャッシュレス時代とは言いながら額面で年間30兆円ほどのお札を印刷して
いるみたいですが、さらにPAYPAYとかが増えたら印刷局の仕事も減りそうな
感じはしますよね。国家公務員も安泰ではなさそうです。

展示室には一億円の束があり、実際に手に持って記念撮影をすることも可能に
なっていますが、重量にして10キロあるので結構な重さですね。
一万円札は1gですが、紙なので湿気によって多少の増減があるのに対し一円玉
も1gですが、こちらは金属なのでほぼ均一です。

10milion-2.jpg
上からとか横から手を入れて持ち上げられます。

10milion-1.jpg
見学記念の日付も表示されています。

というようなお話を聞いて工場見学はお終いとなり、約90分の見学時間では
ありましたが、本当に短く感じる90分でした。

予約とか、ちょっと面倒ですが一度見に行くと面白いですよ。


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青い森のヨッチン

見学ではないですが原子力関連施設に仕事で入った時もセキュリティが厳しかったです。やはり建屋に入る前と出た後で人数チェックをしました。搬入に使うトラックも数日前になっばーを届け出てドライバーさんの職歴も申告します(雇い入れから日が浅いとNGだとか)
by 青い森のヨッチン (2019-09-19 16:51) 

mau

埼玉の造幣局に去年行きました。印刷局も、行ってみたいです。
by mau (2019-09-19 23:00) 

suzuran

青い森のヨッチンさん:
コメントありがとうございます。

以前、御前崎の浜岡原子力発電所に見学に行こうかなと思ったことが
ありますが、質問のコーナーでいつになったら廃炉にするんですか?
とか大人の対応が出来なさそうな質問を言いそうな気がしたので自粛
したことがあります。使用済み核燃料棒は処分するあてもないのに
際限なく積み重ねてどうするんですか?とかホントは聞きたくて仕方
ないんですけどね。

原子力関連だと、例えば使用済み核燃料みたいなヤバイもの以外にも
一片の放射性廃棄物が持ち出されたとしても、その微量な廃棄物を
送りつけて、残りの大量の放射性廃棄物を都内にばら撒くぞ、みたいな
脅迫が成立しそうなので、神経をとがらせるでしょうね。

40年ぐらい前に沢田研二さんが主演した「太陽を盗んだ男」みたいな
テロリストが下見をするとか、印刷局とはかなり方向性の違う犯罪者
の標的にされそうな感じです。
by suzuran (2019-09-19 23:10) 

suzuran

mauさん:
コメントありがとうございます。

案内係も見学者も中高年男性が大半という、ちょっと不可思議な面々の
工場見学でしたが、お札の造形に想像以上の手が入っていていろいろと
面白い見学でしたので、是非どうぞ。

東京に印刷局の本局があって、パスポートとか切手などの印刷もやって
いるみたいですので、お札だけの彦根工場よりも、さらに面白い話が
聞けるのではないでしょうか。

by suzuran (2019-09-19 23:16) 

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