寿司屋の符丁の話 前編 [限定・季節の食材]
大体どのような調査機関のアンケートでも、お寿司がベスト1か、三位以内に
ランクインという結果になっているのは、ご存じの通りです。
それだけ日本に深く浸透した食品ですから、一般に江戸前と呼ばれている沿岸
近海の魚種だけではなく、さらに多くの素材・食材が寿司ネタとして試行錯誤
され、牛たたきやトンカツなどの肉類やフライや天ぷらなどの揚げ物、さらに
ナスの浅漬け、貝割れ大根、松茸などの野菜やきのこまで、多くの食品素材が
寿司ネタとして利用されるようになってきました。
回転寿司が皆無だった頃ならば、カウンターに座ってお好みで食べたりしたら
とんでもない値段になったものですが、最近は回転寿司の普及と共に時間制限
はあるものの食べ放題という店もあったりしますから、お寿司が好きな人には
ある意味良い時代になったと言えるでしょう。
でも、お寿司というと専門用語(符丁)があったり、時価のネタが多かったり
と、やっぱりお店の雰囲気からして一見さんお断りというような感じのところ
が多いので入り難いお食事処というイメージは根強いように思います。
回転寿司の普及により、好みのお寿司を気軽に頼めるようになったこともあり
今では多くの人がお寿司の符丁を使うのが当たり前になっています。
そもそも符丁なんて言葉自体を知らずに符丁を使っていると思われます。
一昔前の寿司職人の中には、店の常連ではない人や年齢の若い人、女性などが
符丁を使うと値段を不当に釣り上げたりといった、嫌がらせをする了見の狭い
寿司屋もあったようですが、今の時代にそんなことをしたらネットで悪い噂が
拡散して最悪の場合、廃業になりかねないので、そんなバカな店主は居ないと
思いたいです。(偉そうな店主の話は聞くので皆無じゃないだろうけど)
お寿司屋さんでは、ネタ(これも符丁ですね。本来の意味は、寿司種=寿司に
のせる食材を指した言葉です。)以外にもいくつかの符丁があります。
まず、お寿司につける醤油は「ムラサキ」といいますが、これは醤油の色から
来ているようです。(光に透かすと何となく意味がわかります。)
そして、箸休めに食べる生姜の酢漬けのことを「ガリ」といいますが、これは
寿司屋の大将とか、分かりそうな人に聞きましたがわかりませんでした。
ネットで調べれば分かるかも知れませんが、この辺りは現実主義なので実際に
見聞きしたことしか書かないことにしています。
これと似た言葉に「アガリ」というのがありますが、これはご存知の方も多い
と思いますがお茶のことですね。
このアガリという言葉は、上がり花という「淹れたてのお茶」という意味から
来ている言葉です。短縮しているわけですね。
お茶という言葉には、お茶目とか茶化すといったように、ちょっと軽めの印象
があるために、おもてなしをするお客様に対しては失礼である、という考え方
から茶の部分を花に代えて使っていたという歴史があります。
そのために、お客さんが来た時にはアガリ茶ではなく、アガリ花と表現されて
お客様が帰る時は、出花(番茶も出花という言葉がありますね。)という表現
で、お茶を供していたということで、元々は花柳界の言葉のようです。
他に、アナゴやシャコなどの加熱調理をしたネタに、調味タレとして使われる
「ツメ」という言葉も割と普通に使われています。
語源は単純で、砂糖や醤油などの調味料を混ぜ合わせて煮詰める(ニツメル)
という工程からツメという部分が短縮されて使われています。
寿司屋さんの符丁というのは、調べてみると本当にたくさんありますから全部
書いていたら、延々と寿司の話になりますが、せっかく始めた話なので二回に
分けて、もう少し続けるようにします。
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