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ナタデココブームで起きた悲惨な話 [限定・季節の食材]

一昔前にデニーズのデザートから流行が広がって、今では定番のデザート用の
食材として定着したナタデココですが、ナタデココの原材料が何かを知らない
という人は意外に多いのかも知れません。

つい先日には、小泉進次郎環境大臣が「意外に知らない人が多いみたいですが
プラスチックの原料は石油なんですよ。」と、トンデモ発言をして世間の失笑
の対象になりましたが、ナタデココの場合はプラスチックよりは原料のことを
知っている人は少ないんじゃないかなとは思います。

natadecoco.jpg

名称の中に「ココ」という文字があるので、南国リゾートが好きな人は推測が
できるかと思いますが、ココナッツ(椰子)の実が原材料になんですね。


フィリピンでは、椰子の実のジュース(ブゴ・ジュース)がポピュラーな飲料
として缶飲料としても販売されていますが、その缶ジュースの中にも白い果肉
が入っているので、ブゴ・ジュースを飲むと原材料である椰子の実の果肉部分
の実物を見て食べることが出来ます。

他には小さな椰子の実(ヤングココナッツ)に穴を開けたジュースが日本でも
リゾート地で売られていますし、量販店でも販売されていることがありますが
あの中を突っつくと少量ですが果肉があります。

大きな椰子の実の固い表皮の内側にある、白い果肉の部分に果汁と水と砂糖を
加えて混ぜ合わせた上で、酢酸菌を加えて発酵させることによって中身の表面
から少しずつ膜が張りだします。

張り始めた膜が厚くなるのを待ち、1センチから2センチ程の厚さになったら
取り出して、酸味を抜いて適度な大きさにカットして、砂糖シロップに浸けて
市販されたものがナタデココです。

この発酵加工に使用する酢酸菌には、アセトバクター・キシリナムという名前
がありますが、特に覚えなくてもいいことだと思います。

ナタデココという言葉自体はナタ=浮いた皮(皮膜)デ、=ofと同じく「の」
ココ=椰子の実という意味で、フィリピンが過去に植民地だった時代の名残を
引きずったスペイン語で付けられている言葉なので、主産地がフィリピンだと
いうこともなんとなくわかるわけですが、ブームが起きた後のフィリピンでは
かなり悲惨なことになった時期もありました。

ナタデココが異常人気になり原料不足から価格が高騰した時に、これは稼ぎ時
と考えたフィリピンの生産者は大量の椰子の実を増産するために農地を拡張し
多額の借金をして生産拡大に励んだわけですが、実際に生産高が増えた頃には
ブームは終わり、ナタデココは売れなくなってしまいました。

借金の返済のために娘が身売り(フィリピンでは自然災害などの際にも夜の街
で働く女性が増えることがあります。)をして一家離散したとか、そんな状況
になったこともありましたが、ナタデココのセルロース(繊維質)が、柔軟な
曲げることの出来る液晶ディスプレイの基盤素材として使われることになって
落としても割れないとか、自由に曲げられる柔軟性が評価されスマートフォン
やタブレットのディスプレイ用素材として採用されたため、現在では食品用と
工業用で安定した需要を創出することが出来て、離れ離れになった家族は幸せ
に暮らすことが出来るようになりました、と一部誇張された表現もありますが
ナタデココ残酷物語は終結したような感じです。



産地と消費地のタイムラグで、悲喜劇が起こるというのは、今の時代でも発生
することではあるので、一点集中型で扇動的にブームを作り出そうという動き
には注意が必要だと思っています。


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