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タクシー運転手 約束は海を越えて [シネマクラブ]

前回書いた「パラサイト 半地下の家族」は、現在ロードショー上映中なので
この場面を是非見逃さないで、ということもネタバレに繋がってしまいそうで
なかなか書きにくいのですが「タクシー運転手」の方は、2018年の公開なので
ネタバレしても大丈夫だと思うので、ソン・ガンホの優良な作品として紹介を
したいと思います。



1979年、朴正煕大統領が暗殺された後、クーデターにより軍部の実権を握った
全斗煥が1980年5月に済州島を除いた全土に戒厳令を発令し、民主化を求める
学生や市民が集まるデモ隊と軍人との衝突が起きました。


韓国南部の光州では精鋭の空挺部隊が投入され、エリートを自認する隊員たち
は全斗煥の手下としてデモの鎮圧をするという任務に対する鬱憤を発散するか
のようにデモ隊に対して実弾による発砲を行い、事件後に認定されたデモ隊の
死者は154人、行方不明者は70人、負傷者は1,628人になりました。


これは映画ではなく現場の映像です。

この事件は光州市への鉄道、道路の封鎖と電話の遮断により韓国内はもちろん
海外にも真相が知られないまま軍人たちは市民に対する虐殺を繰り返していた
わけですが、その噂を聞いたドイツ人ジャーナリストが宣教師だと身分を偽り
ソウルから入国し、光州に向かおうとした際に父子家庭のタクシードライバー
に大金を払って道路が閉鎖されるまでにソウルへ戻るという約束で広州に行き
生々しい現場映像を命がけで持ち帰って公開したことにより、軍人による弾圧
が世界に報道され、韓国が民主化へと進み始めた一つのきっかけとなった実話
を映画化したものです。



光州で取材をした学生から真実を世界に報じて欲しいと頼まれ、それを実際に
行うことが出来たのは、あの勇敢なタクシー運転手がいたからだと、ドイツ人
記者のヒンツペーター氏が講演をするシーンがあり、映画の最後で本人の映像
が流れて、もう一度会いたかったと話すシーンがありますが、実際には事件の
四年後の1984年に肝臓がんのために他界していたことがキム・サボク氏の息子
によって明かされています。

民主化運動が本格化して、軍当局にも目を付けられていたヒンツペーター氏が
韓国に入国できたのはもっと後だったでしょうから探しても見つからなかった
のは仕方なかったのでしょうね。



映画では、大金に釣られて姑息な手段で光州まで乗せたことになっていますが
実際には1975年からヒンツペーター氏とキム・サボク氏は交流があったようで
映画の中では軍による弾圧を信じていなかったキム・サボク氏は実際には外国
の記者との交流によって、光州で何が起きているのかを理解した上で向かった
と見るのが自然だと思います。

光州事件が起きた年、私は高校三年生でしたが、校則に対して人権を無視した
内容だと先生に抗議する嫌な奴でしたから、逆に自由を求めるという部分では
アンテナが髙かったのか、白竜の「光州City」によって同年代よりは光州事件
の内容はよく知っていたので、「タクシー運転手 約束は海を越えて」を観て
とてもいい映画を観た気がしました。



誰にも受け入れられる映画ではないとは思いますが、現在の日本の勝手放題の
政治状況に対して違和感を持っている人は、民主主義を考えるという意味でも
観て欲しい映画だと思います。

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