大動脈瘤は胸に出来る胸部大動脈瘤と腹部に出来る腹部大動脈瘤があり通常は
20-25mmの太さの大動脈の血管が30-40mmまで膨らんだ状態になった状態
を大動脈瘤と呼び、40mmを超えると破裂の危険性が高いとされています。
大動脈瘤の場合は、危険性が高まってくる（瘤が大きくなってくる）と胸部の
場合は発声がしにくいとか、食べたものを飲み込みにくい、胸部や背中の痛み
が出てくることがあり、腹部の場合は強い腹痛や腰痛が出る場合があります。
もっと小さな段階で、他の病気でCTを撮った時に偶然見つかる場合もあり瘤が
小さい方が手術の危険性も低いので、経過観察を定期的に行い、安全に手術が
出来る段階で手術をすれば命を落とさなくても済む可能性は高いです。
残念ながら、うちの父親は早い段階で腹部大動脈瘤が見つかりましたが手術を
拒否して禁忌の喫煙を止めなかったため、就寝中に立ちあがった瞬間に破裂し
腹腔内で大出血をしたため緊急手術をする術もなく亡くなりました。
もしも、なにかの偶然で大動脈瘤が見つかったり、今までにない胸痛や腰痛が
出た場合は救急車を呼んで、心臓外科、血管外科のある病院を探してもらって
適切な治療を受けることが大切です。
ということで、大動脈瘤の場合には破裂する前に病状が進むので、その段階で
CT検査や症状の聞き取り（問診）で、病気の存在を知り、日常生活で注意する
ことにより症状の進行を遅らせたり、手術で治療することも出来ます。
但し、体に不調があっても医者は嫌いだと言っていたら、破裂するまで大きな
症状が出ないこともありますから、特に胸部や腹部、背中、腰に激痛が出たら
救急車を呼ぶようにして下さい、突然の激痛が起きた時に様子を見ていて軽快
することはまずありません。大体は命に関わる急性の病気です。
それに対して大動脈解離は、ほぼ100％が突発性（急性）です。
三層（内膜、中膜、外膜）で形成されている血管の中膜が、なんらかの理由で
裂けて血液が本来の血管内ではなく、中膜と外膜を引き剥がしながら進む病気
で、血管が裂けるのですから当然、激痛がありショック状態で意識を喪失して
倒れることもありますし、意識はあっても自分で動くことは難しいです。
笑福亭笑瓶さんも、前日まで特に変わりなく元気だった、と書かれていますが
前兆がないので誰にも発症を予測することは出来ません。
動脈硬化、高血圧、喫煙、ストレス、高脂血症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群
などの持病や生活習慣が発生要因の一つではないか、と考えられてはいますが
決定的な原因はわかりませんし、遺伝も指摘されています。
マルファン症候群という先天性の疾患がある人は体内の結合組織が脆いために
大動脈解離を発症しやすい体質で、高身長で体の柔らかい人は、この遺伝子を
持っている可能性があり、近親者に大動脈解離の罹患者がいる場合は、発症の
リスクが高いと思われます。
大動脈解離は突然死を引き起こすため、一人暮らしの人の場合だと変死扱いを
されて司法解剖の対象になることもありますが、背中の痛みのために、背中に
湿布を貼っている人が多いという解剖医の話もありますので、急性期で胸部や
背中に激痛がある場合、出来る限り迅速に動脈の手術が可能な病院に救急車で
搬送すれば助かる可能性も高くなります。
大動脈解離の発生のピークは70歳から80歳ではあるものの、40歳-50歳で発症
する例もありますから、周囲の人が背中の痛みを訴えて倒れた場合、救急車を
呼んで、大動脈解離である疑いが強いことを救急隊員に伝えて下さい。
映画やドラマで「首の皮一枚で繋がっている」という台詞がありますが、血管
の壁が裂ける寸前で、薄い血管の壁一枚で命が繋がっている場面かも知れない
ということを多くの人が覚えておくことで助けられる命はあるはずです。