女優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳がんの予防的措置として両方の乳房の
乳がんが発生しやすいとされている部位を切除すると同時に、乳房を再建する
手術を受けたニュースが報じられた際には、女性が健康に生活するための一つ
の選択肢である乳がんの予防として、避けて通れないことだという見方が出て
多くの女性が同じように手術を受けることで、乳がんの死亡率を下げることが
出来るという意見が優勢になったことがあります。
が、日本の病院においては実際に悪性新生物が発生していない乳房を手術する
ことに対する抵抗が強い医師も存在していることで、統一見解を出すことには
至りませんでしたし、ある大学病院の倫理委員会の会議では予防的措置として
乳房の一部を切除する手術自体が乳がんの予防に有効であるという根拠はない
という結論を出したところもあり、冷静に受け止められました。
実際に予防として乳房の手術を受けた場合、手術費用に対して健康保険は適用
できませんし、民間の医療保険やがん保険でも対応は出来ませんから、全額が
自己負担となるため、手術と入院加療に250万円以上の費用が必要になる上に
手術個所の疼痛などの後遺症も、ないわけではありませんから、誰もが費用と
手術後のケアを受けられて、安心して手術に踏み切れるわけではありません。
そんな乳がんの予防法の一つとして、中国を拠点として世界各国80万人以上の
健康状態を監視・調査している調査チームが研究結果として発表したのが脂肪
の多い魚を週に1‐2回程度食べることにより、乳がんの発症リスクを軽減する
ことが期待出来るという調査報告が発表されています。
マグロやサケ、イワシ、ブリなど多価不飽和脂肪酸【DHA・EPA】の多い魚は
ヒトの免疫システムに好影響を及ぼし、血管をしなやかに保ち、脳内化学物質
の伝達に有効に働くとされていて、動脈硬化や心筋梗塞、認知症の予防に効果
があるとされていることは多くの人が理解していると思います。
それだけではなく、これらの魚の摂取量が週に1‐2度の頻度の女性は、魚嫌い
の人と比較して乳がんの発症リスクが14%低かったという数値が出ています。
あくまでも比較の結果であり、DHAやEPAのどのような作用によって乳がんの
予防に関係しているかは詳しく分かっていませんので、いわゆる青魚を食べる
ことによって乳がんを予防できるとは言えませんが、予防できる可能性はある
と見ることは出来そうです。
日本人の食生活は健康的だと言われて久しいですが、そのような伝説的な話が
通用しないレベルで食の欧米化は進んでいて、朝食はパンを中心にしている人
の方が多くなっているわけで、魚食文化は衰退の方向に進んでいます。
食の洋風化によって女性のバストサイズが大きくなったことが、欧米人よりも
乳がんの発生率が低かった日本人女性に乳がんが増えた原因だという人も存在
するみたいですが、サイズの問題ではなくて、洋食化によって焼き鮭や塩サバ
アジの干物など青魚を食べる機会が減ったことが乳がんが増えた原因の一つと
考える方が科学的かつ納得性は高いと思います。
DHAやEPAが人の体にどのような恩恵を与えているかが、もっと深く研究され
乳がんのみならず、いろいろな健康面での影響力が解明されると良いですね。
乳がんのリスクを軽減する脂肪の多い魚
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