大老・井伊直弼の暗殺事件が起きた桜田門外の変で、主君を守れなかった
警護役だった侍が仇討を命じられ、井伊直弼の首を取った後で切腹しよう
として果たすことが出来なかった暗殺者に仇討をするべく探し出すものの
政府から仇討禁止令が出てしまい…という映画です。



映画の内容については詳しくは書きませんが、主君と共に殉ずるか主君の
仇をとことん探しだして仇討をするかと「自己」のない時代を生きた侍の
人生を暗殺した側の立場と共に描いている大人の映画で、幕末の混乱期に
興味のある人には興味深く見られる映画です。

井伊直弼を斬殺した桜田門外は斬り合いをしたために親指が点々と落ちて
いたと伝えられ、実際には映画以上に壮絶な暗殺現場だったようです。

映画の登場人物はもちろん創作ですが、井伊直弼が暗殺された後は京都で
密偵を務めていた村山たかという元芸妓の女性が倒幕派に捕えられて四条
河原で、三日三晩晒し者にされ(女性ということで殺害はされなかった)
その息子の多田帯刀は土佐藩出身の郷士で人斬り伊蔵として知られていた
岡田伊蔵に首を落とされて晒し首にされるなど、井伊直弼に関係した者は
徹底的に粛清されていますので、警護役が生き残っていたとしたら仇討の
前に自分の命が幕府側と尊王攘夷派の両方から狙われたことでしょう。

「テルマエロマエ」でルシウスを演じて、もっともローマ人のイメージに
近い俳優と言われた阿部寛が水戸藩の暗殺者というのはビジュアル的には
違和感がありますが、外見は自分でどうにかなるものではありませんから
仕方ないですね、と無理やり納得させる必要のある映画です。

柘榴坂の仇討 (中公文庫)
浅田次郎


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