名前の通りに海上を滑空する空飛ぶ魚なんですが、実際に富んでいる姿を見た
という人はあまりいないのではないかと思います。
書いている本人が言うのもなんですが私も見たことはありません。
以前は、捕食する天敵(カツオやシイラなどの肉食魚)に追われた時に火事場
の馬鹿力的な最後の手段というような状況に陥った時に、やむを得ず海上まで
飛び出してを低空を飛ぶと考えられていましたが、最近ではトビウオ自体が空
を飛ぶことを楽しんでいるという説もあります。
カモメはただ餌を獲るために飛んでいるのではなく、自分自身の能力の限界を
知るために高く速く飛ぶジョナサンもいるというような話ですが、人間だけが
娯楽を楽しむことが出来るという考え自体が上から目線の偉そうな考えなので
トビウオが最高に気持ちよく飛ぶ瞬間を楽しむことだってあるでしょう。
というようなファンタジーも織り込んだ話はともかくとして、海の表層を高速
で泳いで加速して海面を尾びれで叩いて飛び出すと、折りたたんでいた胸びれ
を翼のように広げて、風を味方にした時は時速60km/hほどの速度で海面上を
約200メートルほど一気に飛びます。
敵のカツオやシイラもなかなかの知恵者で、着水地点で仲間が待ち構えていて
海に飛び込んだ瞬間に餌食になるトビウオもいるみたいですが、自然界の掟と
いうか強い者、知恵のある者が生き残るようになっています。
房総半島から九州の五島列島辺りまでの広い範囲に分布し、6月ぐらいからは
伊豆諸島を巡る船上から海上を滑空しているトビウオが見られることもある
ということなので、興味のある方は行ってみて下さい。
トビウオは九州(主要産地は長崎や佐賀)などではアゴとも呼ばれます。
語源はトビウオの出汁はあまりの美味しさにアゴが落ちるという意味からきて
いる言葉の「アゴ落とし」をさらに短縮した単語がアゴなわけです。
生のままで鮮魚として利用するよりも、素干にしたり焼き干しにして出汁用と
して重宝されていて、お雑煮の出汁はアゴでなければ、というこだわりがある
と長崎県の人に聞いたことがあります。
また、山陰地方ではトビウオをすり身にして棒に巻いて焼いたアゴ竹輪という
練り製品が有名で美味しい名産品とされています。
そして飛んでいるトビウオが見られると書いた伊豆諸島一帯では、トビウオを
伊豆名物のくさやの原料にしています。
主要原料のムロアジやマアジに劣らず、蛋白質が豊富で脂肪分が少ないという
魚本来のアミノ酸の旨味の強い、美味しい干物に加工することが出来る要素を
持っている魚なので、くさやにしても美味しく食べられる魚です。
鮮魚としてのトビウオは、イワシと似た感じの青魚でちょっとクセがあるので
一尾200円ぐらいの安い価格で売られていることが多いので、青臭い魚に抵抗
が無い人には鮮魚としても問題なく利用できるでしょう。
飛ぶという特性から、いつでも遠くへ飛べるように体を軽く保つために、鳥と
同じく体内に餌を残さないように消化器官が短く、内臓が少ないので鮮度低下
が遅く刺身として利用することが可能な時間が長い魚です。
そんな特徴のある魚なので、販売店の人に三枚おろしにしてもらって皮を剥き
一口サイズに削ぎ切りにすれば、EPA、DHAの豊富な刺身を作れます。
店頭で目がきれいに澄んでいる魚体は刺身にして食べられます。