大奥も要するに自らの血統を残すためのなりふり構わぬ子作りの場だった
というのが、華やかな印象とは違った視点で面白いです。
殿様(大名)の重要な仕事はお世継ぎを残すということで精力のつく食事
を摂り続けて、ひたすら子作りに励んで、衰弱死しそうになった(もしか
したら衰弱死した殿様もいたかも…)というのも殿様の別の一面です。
それに対して一般町民の中でも商家は、女系相続という基本があったので
男児ではなく女子が婿養子を取るということで、常に新しい血を迎え入れ
優秀な子どもが輩出されて現代にまで至るということになっているようで
武家社会の崩壊の一因の逆パターンのように感じられます。
婿養子が実際にはあまり賢くも優秀でもなかったら、元々が相続する権利
を有した娘ですから、何の迷いもなく婚外男性の優秀な精子を受け入れて
優秀な子を産んだ江戸時代の商家のシステムは、もしかしたら今後の日本
でも受け入れられると言うか、現時点ですでに生活安定のための夫と優秀
なDNAを受け継ぐための浮気相手という形式で、成り立っているという
見方も出来そうな気がします。
相続の権利もなく、あまりアテにもされていない商家の旦那衆は自分の妻
とのセックスは充実したものではなかったために、外に妾を作って性的な
満足感は主に妾によって得ていたので、江戸時代から妾という慣習が公の
ものとなっていたという話にも説得力があります。
さらに江戸庶民(長屋住まいの人達)には、お金を必要としない性的関係
の相手をしてくれる存在がいたようで、この女性の生活費は、この女性と
関係している全ての男たちの共同出資によって保障されていたとかね…。
いろいろな話が書いてあって面白いですよ。
現代の結婚外恋愛なんて足元にも及ばない自由奔放な性が謳歌されていた
江戸の民衆の話とか、死ぬ気で子作りをしていた武家とかね、なかなか、
面白い本なので興味のある方はご一読されることをお勧めします。
江戸の町は骨だらけ (ちくま学芸文庫) 鈴木 理生 by G-Tools |