渡辺淳一著「欲情の作法」 [コミック・アニメ・本]
性愛の部分にスポットを当てた恋愛論が綴られている本です。
医師としての視点からも性愛について書かれていて、性愛というテーマだけで
下ネタが嫌いという狭量な人には全然向いていないと思いますが、性に対して
年齢を理由に避けようとしている人には読んでもらいたい本でもあります。
内容は「男は振られる生き物である」というlesson1から始まり「なぜ男と女
がいるのか」のlesson14まで、なかなか恋人が出来ない人、恋人らしき人が
出来ても性的関係にまで進めない人など、恋愛途上で道に迷っている人を対象
に書かれている本で、恋愛やセックスに対して自信のない人が、今後前向きに
恋愛に取り組める気持ちになれるんじゃないかなというのが個人の意見です。
もちろん人それぞれに感性は違いますから感じ方はいろいろでしょうね。
私自身はクマ体型ですから、なにがどのように間違っても外見的には、絶対に
モテるタイプではありませんから、高校生ぐらいの若い頃を含めて恋愛経験は
少なくて、いわゆる初体験は20歳を超えてからでした。
芸能人じゃないので、そんなことを書いたからといってセンセーショナルな話
ではありませんからね、サラッと飛ばします。
特に童貞ということに対してコンプレックスがあったというわけでもなく20歳
までには性風俗店に行ってでも童貞を卒業したい(そもそも日本の法律上では
ビジネスとしての性行為は違法なので、そのような発言自体が問題になるはず
ですが、私が若かりし頃にはそういう発言は普通にありました)と言っていた
同級生と見解の違いを感じつつも、特にそれが良いとか悪いとかを決める気も
無く、いつか愛し愛しあう人が現れるだろうという感じで、どちらかと言えば
純粋無垢な恋愛観を持っていたように思います。
高校生ぐらいの若者世代の恋愛に対して「欲情の作法」では、特に若い男性が
女性のことを好きだと言うのは(思うのは)セックスをしたいということだと
いう本音をいかに包み隠しつつ愛しく思う女性とセックスにまで持ち込むのか
という流れを書いてある本でもあるわけで、読んでいると、うんうん確かに…
と同意せざるをえない記述がたくさんあって若者を過ぎて中高年世代になって
ED(勃起不全)とか前立腺肥大なんて感じで、性器だったはずが排尿器官以外
の役割を果たせなくなることを危惧するような年齢になっても充分に通用する
「欲情の作法」が学べるようになっています。
アリスの堀内孝雄さんが正直に書いていましたが、奥さんと結婚する前の交際
を始める頃に「好きだ」「好きだ」と言葉で言っていても、心の中ではいつも
「やりたい」「やりたい」としか思っていなかったみたいな記述がエッセイの
中にあって、男なんて考えることは大差ないんだなと思いました。
中高年になってセックスの回数が減る(機会が減るのか、意図的に減るのかは
人それぞれでしょうが)と生殖器が退化するのではないかというのは、誰もが
多少なりとも感じているのではないかと思ったりしますが医師でもある渡辺氏
は「廃用性萎縮」という言葉を使いそれが現実であることを説明しています。
詳しく書くと長くなるので「廃用性萎縮」という言葉が気になった人はネット
で調べるなり「欲情の作法」を読むことをお勧めします。
単純に言えば女性の場合は女性器が委縮して乾燥するようになり性交痛が強く
なって心では望んでいても体が受け入れられなくなることで、本来は柔軟性の
膣壁が硬化したゴムのようになって、無理をすると裂けることもあります。
そして男性の場合は如意棒の海綿体(スポンジのような組織で問題がなければ
血液を吸い込んで固く勃起します)がスカスカのスポンジ状になり、精神的に
興奮しても血液を吸収して保つことが出来なくて勃起しません。
普段から訓練なのか鍛錬なのか表現に困りますが、あまり間を置かずに機能を
使い続けることで劣化を防止できるので、大切なことだと書いてあります。
もうすでに男女の関係など興味もなければ性欲もないという人の場合には全く
必要のない知識ですが、適度な回数の性行為は脳の活性化に繋がり、年齢的な
衰えによる認知症(アルツハイマー型認知症は病気なので効果はない)予防に
効果があるともされていますから脳と体の活性化のためには、セックスレスは
避けるようにした方が良いということは覚えておいた方が良いです。
渡辺淳一さんの小説は最近は全く読んでなかったのですが、この最近以前の作品は殆ど読んでるほどの好きな作家さんです。
男性側からの気持ちを知ると言うことでも面白いような気がします。
渡辺淳一さんの小説の中でも、性欲に対して男性側の気持ちを表現なさってて、そこはとても独自で魅力的です。
手にとって読んでみようと思います。
by そら (2023-08-14 01:18)
そらさん:
コメントありがとうございます。
元々は「ダブルハート」という心臓移植(実験的な治療で問題になった
手術)をテーマにした医療問題を扱った小説で有名になった人ですが、
いつの間にか、不倫とか大人の恋愛の専門みたいになりましたね。
「失楽園」とか「愛の流刑地」とか、話の展開に無理があるような気が
しますが、小説なので多少の現実離れや浮世離れがあってもいいかなと
いう気がします。医師でもあるので廃用性萎縮とか、適切な説明があり
分かりやすい文章を書いた人だと思っています。
男性(中高年)週刊誌の週刊ポストや週刊現代で、死ぬまで現役とかの
特集が相変わらずのようですが、医学的な裏付けのない気合いみたいな
論調(見出しだけで実際には読んでいないので、あくまでも憶測です)
で男性は中高年になっても勃たせなければいけないみたいな強迫観念を
植え付けるようなことが書いてあるように感じていますが、その辺りは
渡辺淳一氏のアプローチにリアリティを感じます。
いつまでも恋をすることで、体の機能は維持され、それが自信になって
前向きで元気な老後に大切なことだというのは伝わってきました。
by suzuran (2023-08-14 21:32)