去年が穏やかな年末年始だったのに対して、今年は極寒の寒波と強風によって
降雪の多い地方では猛吹雪が予想され、例年はそんなに雪が降らない地域でも
大雪に対する警戒が発令されるような荒れた年末年始になりました。
そんな荒天と低温の年の瀬ということですが、コロナ禍の影響で里帰りをする
こともなかなか難しく、のんびりと上げ膳据え膳の温泉旅館や暖かいリゾート
で新年を迎えるというのも難しい状況で、食品売り場では高級和牛のセットや
タラバガニやズワイガニなどの高級食材の売れ行きが好調で、売り場に並べた
直後には売り場が空くということになっているようです。
いわゆるハレ型商材(祝い事などの時期に売れる高額商品)がもっとも売れる
年末年始でも、特に今年はカニの中でも高級品、エビの中でも高級品から先に
売れて行くという感じで、数の子やいくらなどの魚卵も好調のようです。
いくらなどは割と年中販売されていますが、一年間で実質10日もない年始用の
食材である数の子は、現在でも日本の伝統を受け継ぐ「おせち料理」の花形と
して、新年の始まりとなる元旦には欠かせない存在になっています。
数の子の親魚はあまり人気のないニシンなんですが、その卵巣である数の子は
海外から大量に輸入され、ほぼ日本人だけが独占的に利用しています。
北海道ににしん御殿と揶揄されるニシン漁船の網元の大邸宅が建てられていた
時代には数の子は天日干しにした干し数の子が主体でしたが、ニシンの漁獲量
が激減して、北海道のニシン漁が不漁になった後(現在は産卵期の北海道の海
がニシンの産卵、放精で乳白色に染まる群来が見られるようになり、漁業者の
稚魚放流などの資源保全活動の成果が出てきたと言われています)アメリカの
アラスカを主な産地とする塩蔵数の子が輸入されています。
美味しさでは干し数の子に叶わない塩蔵数の子ですが、コスト面の有利さから
現在、流通しているのは大半が塩数の子で、塩抜きを失敗すると塩分が過剰に
残って塩辛かったり、逆に塩分を抜きすぎると苦みを感じて美味しいものでは
なくなってしまいます。
塩数の子は高いので、塩抜きの手間がなく味も付いていて便利に使える味付け
数の子の需要がありますが、大西洋産の原料や売れ残りの塩数の子を加工して
作られているため食感が劣っていて、塩数の子を塩抜きしたものほど美味しく
ありません。(価格も若干、抑えめになっています)
数の子の産地は、大きく日本海産、太平洋産・大西洋産と分けられていますが
北海道で獲れる日本海産が原料の良さだけでなく、加工技術などの点でも最良
とされていますが、値段も高いことから流通量の大半は太平洋産です。
大西洋産は卵が緩い印象があるので安売りされていても買いません。
太平洋産の数の子の中で高品質なのは、アラスカ州のシトカという海辺の街で
水揚げされたものとされているので、大切な人への贈り物や自分用用途に品質
の良い物を探す場合は、シトカ産を指定すると良いかとは思いますが、店舗の
担当者が知っていて、産地別に対応できるかはわかりませんね。
ちなみにアラスカ州のシトカというところは、動物写真家の故・星野道夫氏が
撮影の際に常宿にしていたゲストハウスがある自然豊かなところで、シトカの
街の中のハリバット・ポイントという場所には、亡くなった星野さんを祀った
トーテムポールが存在しています。