高度成長期からバブルの時代まで給与取得労働者=会社員は就業している会社
が倒産でもしない限りは、少なくとも終身雇用制という慣例に守られ、大きな
ミスをしなければ解雇されるようなこともなく家族を養って、趣味を楽しんで
定年まで多少嫌なことがあっても会社勤めをしていれば安泰でした。
ところが企業がアメリカ式の業績給や能力主義などを採用し始めてからは日々
スキルアップに努力し、休日は能力の向上に努め、異業種関係者と交流をして
情報を収集し、英語や中国語の研鑽に励んで会社が望むスキルを身に付けない
と出世コースから外れるどころか、退職勧奨の対象になるということになって
しまったため気の休まる時がないと感じる人が急増している実情があります。
企業経営者も危機感を持たせることが重要という無責任なコンサルタントたち
のアドバイスをそのまま受け入れて、浅はかな社長の中にはようやく我が社も
社員に危機感を持たせることが浸透したと成功例のように喋っています。
が、異様なまでの危機感の押し付けによって心を病む人は増え続け、将来にも
希望を持てないとして自ら死を選ぶ人も増加し続けています。
危機感を持たせた結果、その危機感に押し潰されて勤務する会社に対する信頼
や社長の人間性に対する失望や不信感が働く意欲を低下させるということには
全く触れることなく、危機感を共有できない人は当社には要らないとか某企業
の人事担当者が40代以降の男性は要らないと言ったというモチベーションが
下がりまくりそうな話が話題に上って、企業が高い水準の利益を得るためには
社員に危機感を持たせることが大切だと本気で思っている経営者や人事担当者
はかなり多いようです。
しかし、危機感を共有することに成功した企業が、従業員に多くの利益を配分
したという話は聞きませんし、危機感が必要だと騒いでいる企業ほど精神疾患
に悩む従業員や自殺者を多く出している現状があります。
結局、必要以上の危機感を押し付けて利益を得ているのはコンサルタントとか
自己啓発セミナーを主催する教育機関などで、企業の従業員は体を壊して心を
壊しているだけのことだというのが実際ではないかと私は思います。
本来、危機感を持たなければならないのは経営者であり、外圧でも社内の問題
であっても経営幹部が体を張って受け止めることで、従業員は魅力的な経営者
の下で働くために自己啓発をしてスキルアップをするというのが本来の自主的
な自己啓発であり個人の幸せを追求する姿のはずですが現実は違います。
経営者が自己責任を放棄または自分自身の責任の範囲を制限するために従業員
に危機感を持たせようと考えているのならば、そんな経営者は即座に退陣して
従業員の生活を守るのは自分自身だという自覚を持った本当の意味での責任を
取れる経営者に代わるべきでしょう。
ナイフの刃の上で綱渡りをするような恐怖心を日々感じながら仕事をして人が
幸せな生活をすることが出来ると思っているのなら、それはもう人間としては
破綻していると思いますが、それと同じ意味のことを言い続ける馬鹿な経営者
のなんと多いことかと感じているのは私だけなのかな。