今年一月に亡くなった、やしきたかじんさんの闘病生活について書かれた
「殉愛」について、遺された妻側の一方的な主張に基づいて書かれている
ことにより名誉を傷付けられたとして、たかじんさんの長女が、発行元の
出版社に対して発行差し止めと、1100万円の損害賠償を求める訴訟を
東京地方裁判所で起こしました。

この本の内容については事実と異なる点が多々あり、ノンフィクションと
して出版されていることに対して疑念の声が上がっているのが事実であり
やしきたかじんさんと結婚した時には、事実上、イタリアに夫がいたにも
関わらず、恋人未満の関係だったと事実が捻じ曲げられている部分もあり
長女側が勝てる可能性の高い裁判だと思います。

具体的には、たかじんさんが食道がんだと知った長女が「自業自得やな」
とメールを送ったとする記述や、たびたび金の無心をしていたかのように
書かれた部分などについても虚偽だと主張していて、遺産は全て自分の物
と主張している妻が話した内容だけを全て事実のように書いている作家の
矜持の問題についても暗に指摘しているように思います。

ノンフィクション作家を気取りつつ妄想・空想を織り込むことを公言して
いるようですが、その表現によって遺産の相続が不正に行われているなら
それは話を感動的になるように修飾したというレベルでは済まないわけで
流行作家だからと、この問題から腰が引けているメディアの対応と共に、
もっと大きな話にするべきだと思います。

なぜノンフィクション作家はお化けが視えるのか (中公文庫)
工藤 美代子


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