重大事故が発生した務安空港 [飛行機・鉄道・自動車]
仁川空港、韓国第二の都市であり、映画祭の開催など国際都市としても認知度を
高めている釜山にある金海空港、そして、以前は韓国のハワイと形容されていた
リゾート地として知られる済州空港が国際線の空港として知られています。

それに対して務安空港は全羅南道の西側、光州からも木浦からも中途半端な位置
にある空港で、観光地でもビジネスの拠点でもない田舎の空港です。
韓国の国内線は務安と済州の路線のみ(光州にも空港があり、ソウルと結ばれて
いるので務安を利用する理由はあまりありません)国際線もチェジュ航空の台北
と長崎、延吉路線のみでしたが、最近になってジンエアーが台北、成田、関空の
路線を開設しましたが、今回の事故の影響で運休になった上、事故リスクが高い
空港というイメージが定着しそうなので撤退すると思います。
務安空港の周辺は干潟の海岸線で、渡り鳥の中継地として有名なところでした。
干潟は韓国名物のナクチ(足長タコ)の名産地として知られていますが、その他
には特に観光資源らしきものはなく、23年の年間利用客は24万6千人と国際空港
としては一桁少ない利用客の空港でしたが、12月からバンコク線が新規開設され
これから韓国国内の集客に期待という状況でしたが、その新規路線の機体が事故
に遭ったわけですから地元のショックは大きいことでしょう。
務安は空港使用料が安いこともあって日本からの定期便もソウルや釜山行きより
安くなっているので、務安線の利用を考えたこともありましたが、現地の評判は
あまり良いものではなく、あまりにも便数が少ないので地元の住民たちが空港内
で唐辛子を天日干ししていると言われているぐらいのローカル空港と揶揄されて
いるらしいということだったのと務安からソウルや釜山に行くのもバス利用以外
に方法がないぐらい交通の便が悪いので利用は止めたことがあります。
元々の需要予測では年間990万人が利用するとされていたみたいですが、科学的
な手法ではなく、大甘な建設推進を前提とした誇大妄想的な需要予測だったこと
が完工後に判明するということで、日本の土建屋と官庁・政治家の癒着行政でも
大差ない話ではありますが、約1千万人の予測に対して25万人に満たないわけで
税金泥棒と言われても返す言葉はないはずです。
事故で問題になった滑走路の長さですが、2,800メートルあるので日本の大半の
国内線空港が2,000メートルなのと比べれば極端に短いわけではありません。
愛知県営名古屋空港は2,740メートルですが、シンガポールやデトロイト行きの
路線もありましたから、燃料搭載量と乗客・貨物の搭載量を調整すれば国際線の
運航に問題はなく、またB737クラスの航続距離なら満席でも大丈夫です。
但し、滑走路から200メートルしか離れていない場所に盛土をしてコンクリート
で固めた砦のようなローカライザーの設置方法には大きな問題があると指摘され
この構造物がなければ、ほぼ全員が死亡するような爆発にはならなかっただろう
と見られているのは正論だと思います。
それと周囲に干潟があり、渡り鳥の飛来地として湿地保護区域に指定されている
ことから冬の時期には約1万2千羽の渡り鳥が観察されています。
YouTubeで、バードストライクで油圧が全部ダメになることはないと主張する
人もいますが今回の事故では、左のエンジンに鳥が吸い込まれて発火、右側にも
同様に鳥が吸い込まれた他、翼にも鳥が挟まったという話があることから単純に
エンジンが片方停止しただけではないことも考えられます。
機長から救難信号が出た時点で、油圧系統に深刻なダメージがあったという前提
で考えれば、鳥との衝突は1羽2羽ではなく、複数の鳥によって連鎖的にトラブル
が発生したために降着装置の不具合、フラップ操作の不具合などで接地後の速度
をコントロールすることが出来なかったと見るのが自然だと思います。
胴体着陸をする前に燃料を投棄して、滑走路に消火剤を撒き、消防車が待機する
というのは必要な手順ですが、その手順が遂行できないぐらいに条件が悪かった
からこそ、大きな事故になったわけでフェイルセーフシステムが採用されている
現代の旅客機が鳥との衝突程度で操縦不能になるわけがないと結論付けることは
人の驕り以外のなにものでもありません。通常では起こりえない異常事態が発生
したから、いくつもの安全対策が取られていた旅客機が緊急着陸したわけです。
渡り鳥が1万羽以上も飛来する場所に、安全ではない方法で着陸支援設備を設置
して政治家の夢想を現実化させるために作られた空港に、かなりの割合で問題が
あったと見るのが現時点での原因分析ではないかと考えます。
今後、フライトレコーダー、ボイスレコーダーの解析が進められることで、真因
に辿り着くまでに、そんなに時間は要さないと思います。
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