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三菱スペースジェット・開発中止 [飛行機・鉄道・自動車]

2008年にミツビシリージョナルジェット(MRJ)として事業化を決定し、三菱
重工業が三菱航空機という会社を設立して、国産旅客機の開発とライン投入を
目的として国産ジェット旅客機の開発を進めてきましたが、2020年に事業化
の凍結を発表してから3年が経過して、正式に開発中止が発表されました。



日本航空機製造が開発・製造したプロペラ旅客機のYS-11以来の国産旅客機の
開発は2008年から2023年まで多額の資金(国からの補助=税金も投入されて
いますから他人事ではありません)が投下されましたが、結局は飛行試験用の
機体を作って試験飛行だけで終わったわけですね。


元々、2025年以降に世界中で数万機の需要があるという試算の元で、100席に
満たない小型ジェット旅客機の開発がスタートしましたが、三菱航空機が開発
をスタートした時点で、ブラジルのエンブラエル社のERJ170/175が完成機と
して日本航空、フジドリームエアラインズで導入が決まっていた他、カナダの
ボンバルディア社も最新型小型ジェット機の開発が大詰めを迎えC-シリーズの
販売を開始していたので、三菱に勝ち目はなかった分野でした。





ボンバルディアのCシリーズも、エアバス社との協業体制を模索していました
が最終的にはボンバルディアの手を離れて、CS-100、CS-300はエアバス社で
A220-100、A220-300という名称で市場に投入されることになるぐらい競合
の激しい分野ですから、既に実績を積み重ねて信頼性と収益性を確保している
二社の間に割って入ることは不可能だと思いましたが、国策として日本航空と
全日空が確定発注したので、採算性は度外視して航空会社に納入するぐらいは
するかと思いましたが、やっぱり無理だったことが露呈しました。

2008年の事業化に合わせて、納入時期まで発表していましたが、2009年には
早くも納入延期を発表し、毎度の延期を繰り返して、飛行機自体の開発も遅々
として進まない上に、納入延期に伴う航空会社の代替え機のリースなどの経費
補填も発生しますから、踏んだり蹴ったりだったと思います。

当初「MRJ」だった機体の名称のミツビシスペースジェット(MSJ)に変更し
新たな目標を持って開発を進めるかと思いましたが、2020年秋に三菱航空機の
社長が「いったん立ち止まる」と発表し、事業化凍結をしましたから、事実上
の撤退宣言だと見ていましたが、やはり開発中止になりました。

ここまでに三菱グループのみならず、日本政府による新たな産業育成の目玉と
位置づけられた国策プロジェクトは大きくコケました。1兆円の開発費は丸々
損金になり、経済産業省も500億円を拠出していたので税金分については返金
を要請するのが筋だと思いますが、大企業に甘いのでどうでしょうね。
この辺りは経済産業省、三菱重工業のどちらにも信用はありません。

国産旅客機と喧伝しながら、肝心のエンジンはエンブラエルやエアバスで利用
されているアメリカのGEやプラット&ホイットニー社製のエンジンを搭載して
コックピットの計器周りやアビオニクスもアメリカ製、実質的に機体と翼だけ
が国産ということで、声を大にして国産ジェット旅客機とは言いづらい飛行機
だったのは確かだと思います。

日本航空と全日空は機材計画に入れていたので、新たに同クラスの小型旅客機
の選定をしなければならなくなるので、その納入時期によっては三菱重工業が
(三菱航空機は解散するので、三菱グループとして責任はあるでしょうね。)
リース機の補填なども必要になりそうで、まだまだ余波はありそうです。

三菱重工業は、国産ジェット機の知見を活かして、英国、イタリアとの共同で
次期戦闘機の開発を目指すとしていますが、日本の防衛産業は防衛省と緊密に
連携しているとは考えられないので、このプロジェクトもコケると思います。
今までヨーロッパの戦闘機を導入していないアメリカ従属の自民党政権が方針
を転換するとは思えませんからね。自民党を排除するなら話は別ですが。


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