大動脈解離という病気の怖さ

芸能人や有名企業の経営者が急逝した時に、意外によく出る死因になった病名
が、この大動脈解離という病名です。
よく似た症状で大動脈瘤という病気もありますが、大動脈解離が血管の内部が
裂けるのに対して、大動脈瘤は血管に瘤が出来て破裂することによって体内で
大出血をするリスクが高まる病気なので、病気としては違います。



解離性大動脈瘤で亡くなったのは大瀧詠一さんでした。
家族で食事後にデザートの林檎を食べた時に突然発症し、家族の方たちが林檎
が喉に詰まったと勘違いするタイミングで発症し、帰らぬ人になりました。

大動脈解離が発症し、血管の内部の裂けた部分に血液が入り込んで血管が薄く
なって瘤状になると解離性大動脈瘤になって、即座に破裂する危険性は回避が
出来ますが、根本的には全く治っていないので出来るだけ早く血管を補強する
手術を受けるか、血管を人工血管に置き換える手術が必要になります。



実は働き盛りと言われている年代の死亡原因としては、心臓血管系・脳血管系
に続いて多い症例となっていて、高血圧・糖尿病・高脂血症など血管に負担が
かかる病気を罹患している人が発症しやすいとされているので、それらの病気
を既往症＝持病として持っている人は要注意です。70歳代が発症の頻度が高い
年齢とされていますが、40歳代からリスクのある人は発症します。

人間のもっとも太い血管である大動脈は心臓から上向きに出て脳に血液を運ぶ
頸動脈と枝分かれをしながらカーブをして下降し、胸部大動脈と腹部大動脈に
分かれて全身に血液を運ぶ基幹部分となる動脈です。

血流・血圧とも激しく強い流れがありますから動脈の内部は内膜・中膜・外膜
の三層構造になっていて、通常は血液は内膜の内側を通りますが、加齢などに
よる動脈硬化の進行によって内膜が弱くなって穴が開くことがあり、内膜から
入り込んだ血液が中膜と内膜の間を引き裂きながら進むために、血管の内部が
引き剥がされた状態になるために解離という表現が使われます。

血管を引き剥がしながら進行するために、当然強い痛みがありますがその痛み
は背中側に抜けることが多く、さらに時には胃が痛いというように感じるため
に背中が痛いからと整形外科を受診したり、胃が痛いからと消化器系の内科を
受診したりしているうちに血管内の解離が進んで死の危険が増大します。

内膜の穴が入口となって内部を引き裂く状態が続いた挙句に偶然、血管の中に
もう一つの内幕の穴が開いて、血管内を迂回する形で血液が流れるようになる
場合があり、そのような場合は解離性大動脈瘤となり、故・石原裕次郎さんが
大手術の結果、回復した病気ということになりますが、この場合も出来るだけ
早く、血管を補強する手術をしないと、外膜が破れて体内で大出血を起こして
緊急手術をするまでもなく亡くなってしまうことになります。

胸の痛みを感じて病院に行った際に、ＣＴやＭＲＩで見つかる場合があるので
もしも見つかった場合は医師の指示に従って、開胸手術にはなると思いますが
早急に治療を行えば命が助かる病気です。

内膜と中膜の間を血管を引き剥がしながら進行した解離がある程度まで進むと
一旦止まるのが通常の症例で、内膜に再度穴が開いて血管内に血流が戻るかは
患部の血管の傷み方次第ということになります。

内膜を破って血管内に戻らずに溜まった血液は患部の容量を超えると血管の方
に合流することが出来ないため、心臓の方へと戻るようになるため心臓と心臓
を包む心膜（丈夫なので破れません）の間に溜まって行くため、丈夫な水風船
の中で心臓が動き続けるのと同じですから周囲から圧迫された心臓は物理的に
動くことが出来ず、いづれ拍動が止まってしまいます。

余裕のない容量の袋の中で動いている心臓ですから、周りを血液が満たしたら
心臓が動くスペースが無くなるわけで、その状態を「心タンポナーデ」と言い
救急搬送されても緊急処置は出来ません

心臓を外部の力で動かすのが心臓マッサージやＡＥＤなどですが、心臓が動く
スペースが無ければ動かしようがありません。

大動脈解離という病気は心臓が血液を送り出すことで、その血液が心臓自体を
圧迫してしまうということなので、心タンポナーデ状態で倒れてしまった時は
医師の技量や救急車の搬送時間には関係なく命を救うことは出来ません。

左側の肩甲骨の辺りに身体の内部が引き裂かれるような激しい痛みを感じた時
には、もしも他の症状が無くても血管の緊急手術が可能な病院に救急車で搬送
してもらうことで命を救う確率は格段に高まります。

寝違えたかな？とか、仕事で疲れているからと自己判断で湿布を貼って様子を
見ることで助かる命を落とすことになりかねません。

今までにない痛みを感じた場合は遠慮したり、迷うことなく救急車を要請して
心臓外科、血管外科のある病院で検査を受けることが望ましいです。



石原裕次郎さんが肝細胞癌で逝去する前に成功する確率は3％と言われて手術
を受け、奇跡的に復帰した際の病名が大動脈解離でした。

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