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寒い季節の高級魚・ふぐの話 -2 [限定・季節の食材]

ふぐ毒の話の続きです。

ふぐの毒は大半の場合は肉、白子には含有しないとされており肝臓・卵巣など
の臓器が最も強い毒を持っていることが確認されていますが、それらの臓器を
循環する血液中にも当然、人間の致死量に相当する毒が含まれています。



ですから、ふぐの調理をする際には常時、流水を流して体内の血液を全て洗い
流すようにして肉には残らないように細心の注意が払われています。


テトロドトキシンは、ふぐが産卵する冬場に最も強力になりますが、その時期
は皮肉なことに、最もふぐが美味しくなる時でもありますから、ふぐ毒による
中毒事故が起きるのは、ほとんどの例が寒い真冬になっています。

ふぐ毒で中毒した場合、人間はどういう状態になるかということですが、早い
場合だと20分~30分後、遅くても6時間以内には中毒症状が出ます。

まず、唇や舌、顔面、指先などの感覚器官が最初に痺れはじめ、その後、頭痛
や嘔吐などに移行していき、その時点でふぐ毒による中毒だと認識されるのが
普通なので救急病院に搬送されることになります。

さらに症状が進むと、全身的な麻痺状態になって歩行は困難になり、嚥下する
ことも出来なくなるので、唾液を飲み込むことも出来ず、よだれが止まらなく
なり、さらに呼吸中枢が侵されるため反射機能もなくなり、呼吸困難で死亡と
いうことになりますが、中毒者にとってふぐ毒の怖いところは、死ぬ直前まで
意識が明瞭であるということで、本人の意思を伝えることは出来ませんが周囲
の声や処置をしていることは自覚できるということです。

自分は助からない、このまま死ぬんだという自覚は出来ても、言葉を残すこと
も手を握ることも出来ずに死を迎えることになります。



江戸時代には、ふぐ毒に当たった時は全裸にして首から上だけを出して土中に
埋めて毒素を抜くという方法が取られていましたが、それはあくまでも俗説に
基づいた民間療法レベルで、実効はなかったはずです。

勿論、今では胃洗浄や人工的な呼吸管理技術の向上によって、救命率が向上は
していますが、肝臓や卵巣を食べるというような掟破りの無謀なことをすれば
先端の医療技術であっても命を取り止めることは出来ない場合はあります。

ちなみに厚生労働省の統計では、ふぐ中毒による死亡率は約50%程度です。
この統計自体が医療技術の整っていない、過去からの平均値であることを考慮
すると、最近の死亡率は、ほぼ“0”と考えて良いかとは思います。

ただ、ふぐ毒であるテトロドトキシンには解毒剤が無いということは、絶対に
覚えておかなければならない重要な事実です。

トラフグの猛毒が有名ですが、実は防波堤釣りでコロコロに丸くなって釣れる
クサフグは全身の臓器、血液や身にも猛毒があり、あの小さなふぐ一匹あれば
人間の致死量に相当するので、保険金殺人の凶器として使われることも想定に
入っているみたいですが正確な致死量を公表すると実行に移す人が出かねない
ということで、法医学上の秘密になっています。



量販店に行くと冬場の時期には、塩干商品のコーナーに「ふぐ一夜干し」とか
「ふぐ味醂干し」などの加工食品が販売されています。

また、私が子どもの頃には本物のふぐなんて見たこともなくて「ふぐ茶漬け」
とか、ふぐを塩味で加工した塩たら(すきみたら)のような商品が、売り場に
並んでいたので、子ども心にも、あんなものを食べたりしたら死んじゃったと
いうことにならないのか?と心配に思っていたのですが、これらの加工原料に
なっているものは、ほとんどが無毒のサバふぐという種類です。

このサバふぐは、一般的のふぐの食べ方である刺身やちりなべとして使っても
それほど美味しくはないために、加工原料として安価で流通しているのですが
台湾以南からベトナム近海で漁獲された個体については、サバふぐであっても
毒があるようなので、輸入されたサバふぐは危険かもしれません。


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