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MINAMATA -ミナマタ-【2020年・アメリカ映画】U-NEXT 399円 [シネマクラブ]

「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの主役、ジャック・スパロウ役で
一時は世界で最も稼ぐ俳優と言われていたジョニー・デップが主演し、日本の
熊本県水俣市で発生した高度成長期の公害病「水俣病」をテーマに写真を撮り
世界に惨状を訴えたユージン・スミスの活動を映画した作品です。



ジョニー・デップの作品では若かりし頃に、とんでもなく無法者なCIA工作員
を演じた「レジェンド・オブ・メキシコ」が好きなんですが、MINAMATAも
映画の前半部分では、ライフ(すでに廃刊されている写真誌)のカメラマンと
して日本に来ながら被害者の協力を得ることも出来ず、投げやりな役柄を演じ
この人にはやっぱりこういう役が合うんだね、と思いました。


が、被害者側との補償交渉に真摯に向き合おうとしない社長の態度、さらには
こっそりと大金を払って黙らせようとする社長に屈服しそうになった自分自身
に対する怒りの感情が、被害者の会の取材を通して、ジャーナリストとしての
社会悪に対する抑えがたい感情を高ぶらせる演技には、思わず映画の場面へと
引き込まれる圧倒的な演技力を感じます。



会社側に工場廃液を垂れ流し、多くの人々の体を蝕んだ公害を認めさせ、会社
から賠償金を受け取るための裁判をするための戦いの一場面ごとをシャッター
が切り取り、物言わぬ被害者の姿を映し出すことで、大きな資本を持ち権力を
持つ大企業に対して、一市民の発言はあまりにも軽い現実を見せつけます。

この当時、日本では四大公害病という言葉があり、その一つが水俣病です。
熊本県水俣市のチッソという主に肥料を製造する会社の工場から、無害化処理
されないまま垂れ流しになっていた工場廃液の中に含まれていたメチル水銀が
水俣湾の魚介に蓄積し、それらを食べていた住民が手足の麻痺や脳の機能障害
によって生活に支障をきたすだけでなく亡くなる人も出ました。

他にも新潟県の阿賀野川流域でも、水俣病と同じ症状が出る病気が集団発生し
原因は熊本県と同じくメチル水銀だと特定されたことから第二水俣病と呼ばれ
熊本と新潟で被害を受けた認定患者は約3,000人でした。

さらに富山県神通川流域では、鉱山廃液中に含まれていたカドミウムが原因で
子供を出産した女性の手足の骨がもろくなる症状が出て、激しい痛みを訴える
様子からイタイイタイ病と名付けられました。

そして三重県の四日市市では石油化学コンビナートの煤煙の中の亜硫酸ガスが
原因で呼吸器や一部では肝臓にも症状が出て、重度の気管支炎や肝障害により
死者も出ていて、同じように石油化学工場が集中していた神奈川県の川崎市や
兵庫県の尼崎市でも同じように、ぜんそくに苦しむ人がいました。



MINAMATAの映画の中の社長の台詞のように、日本人全体の中で公害の影響で
苦しむ人はppmレベルであり、日本全体の繁栄に比べれば取るに足らないこと
だと企業経営者も日本政府も考えていたから、全国で公害病が発生したことは
間違いないことだと思わざるを得ません。
ちなみにppmとは、parts per millionの略で、100万分の一のことです。

ストーリーには実在した写真家ユージン・スミスと、その妻アイリーンが体験
した事実とフィクションが織り交ぜられているため歴史の証明としての価値は
低いかも知れませんが、会社を守るためならどんな嘘も吐く、会社の醜悪さが
これからの日本に必要なのか?という視点から、いろいろと考える機会を作る
秀作だと思いますので、お時間に余裕がある方、ぜひ観ていただきたいです。

海外のジャーナリストが命を賭して世界の良心に訴えたがために、日本で地道
に活動していた公害病被害者の支援団体にも活路が見いだせましたが、日本の
報道には弱者を助ける、正義を貫く、という態度がほとんど見かけられなくて
それが一番残念でしたね。そしてそれは今もほとんど変わっていません。

核兵器を共有するとか、専守防衛にこだわる必要がないとか、明らかに憲法に
違反した発言を平気でするようになった安倍晋三や自民党関連の有識者と形容
される狂気に満ちた人間たちの発言に全く批判をしない日本の報道関係。

こんな好戦的な輩を放置すると、国家総動員で聖戦に突入なんてことも普通に
引き起こしそうですよ。若い世代の人たちがテレビの似非評論家やバカ芸人の
無責任コメントに同調する傾向があることを非常に危惧しています。



公害病は国家の企業の大罪ですが、それを断罪するどころか国家や企業の応援
に熱心な報道機関こそが、日本にとって危険な存在です。


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