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MINAMATA -ミナマタ- [シネマクラブ]

今の学生世代(13-22歳の青少年)の人が公害病と聞いても恐らくは具体的な
病気や病状をイメージすることは難しいと思いますが、私が小中学生の頃には
公害病訴訟のピークだったことから水俣病やイタイイタイ病、光化学スモッグ
やスモッグによる煤煙による喘息などにより日本各地の子どもから老人までが
企業活動の犠牲になっている時代でした。



スモッグという言葉も現在ではあまり使われていませんが、この言葉は日本で
作られた、いわゆる和製英語ではなく、smoke (煙) と fog (霧) を合成し
大気汚染物質によって視界が悪化している状態を示した正式な英語です。


公害病の中には、熊本県の水俣湾には、チッソという化学工場が製造していた
アセトアルデヒドの副産物であるメチル水銀が、工場排水とともに垂れ流され
水俣湾で漁獲された海産物を食べた人たちの間で発生した水俣病があります。

最初に異変が起きたのは猫で、魚介類を常食する人の家で飼われていた猫達が
一つの場所でクルクルと回り始めたり、酔った人のようにフラフラと歩き回り
障害物があっても避けられずに衝突してしまう、などの異常な行動が目に付く
ようになり、医師や工業化学に詳しい専門家が症状に注目し始めた頃になって
人間の発病者が急増するようになり大きな問題になりました。

当初は責任を否定していたチッソが責任を認め、その監督官庁を総括している
日本政府も被害と責任を認め、廃液の流出が止まって個人への賠償が始まった
ころになっても、まだ新たな患者が出るほどに汚染状況は悪化していて水俣病
と認定された人は2,000人超、被害を受けたと確認されている人は15,000人超
の大規模なもので、水俣湾の底に溜まっていたメチル水銀が含まれたヘドロを
埋め立てるために13年間の歳月と485億円の費用がかけられました。

魚を食べていた成人が水俣病になり、妊娠中に魚介類を食べていた母親の子は
胎盤を通じてメチル水銀が影響を及ぼした、胎児性水俣病の症状が出ることが
ると公式に認められた後は、日本全国で公害病を恐れる消費者の水産物不買が
広がり、子供の頃のことですが熊本県産に限らず、魚を食べると工場廃棄物の
影響で病気になるという噂が広がったことは覚えています。

同じく工場廃液の中にメチル水銀が含まれていた地域では、第二水俣病が発生
し(水俣湾とは関係ありませんでしたが、メチル水銀中毒による症状の場合は
代名詞のように水俣病と総称されていました。)工場からの排水にカドミウム
が含まれていた地域では骨が脆くなり、少しの力でポキポキと簡単に骨折して
しまい全身の骨折痛を訴えるイタイイタイ病という公害病が発生しました。

というように公害病が発生した時代、日本は海外からエコノミックアニマルと
揶揄され、経済発展のためなら一般市民の多少の犠牲は仕方ないという考えが
政治家や経営者の間で共有されていたわけです。



そんな黒歴史の時代の水俣病をテーマにした映画が9月23日に公開されます。
主演はジョニー・デップで、1971年から1974年まで、現地水俣に住居を借り
公害病の被害者の日々の暮らし(生活の様子、闘病の様子)を撮影して世界に
発信を続けたアメリカの写真家ユージン・スミス氏をモデルにしています。



日本で水俣病を告発し、チッソを相手取り被害者の補償を求めて裁判を戦った
市民活動の中心人物を真田広之が演じ、水俣病に苦しむ住民を相手に社会全体
の利益の前では無に等しいと断じたチッソの社長を國村隼が演じています。



水俣市で上映会の実施をしようとしたものの、水俣市から後援を拒否されると
いうことがあり、この期に及んで隠蔽か?という話もありましたが、熊本県は
後援を承諾していて、温度差というか、日本特有の地元の恥は隠したいという
ムラ社会的な発想なのかなと感じました。

水俣市の環境課が出したコメントの中では「作品が史実に基づいているのかや
製作者の意図が不明で、差別、偏見の解消に役立つのか判断できない」という
ことになっていますが実際に映画を観ないでするコメントに意味はないです。

少なくとも実際に観てから、そして環境課ではなく市長が判断するべきことと
思いますが、どうなんでしょうね。福島第一原発の事故を矮小化して汚染水を
海洋放出しようと考えている日本政府のやり方を精査する意味でも、この映画
を観ることは意味があると思いますけどね。



決して明るい内容ではありませんが、未来志向の映画ではあると思いますよ。
公害については、もう少し続きを書くようにしたいと思います。


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