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第92回アカデミー賞の発表 [シネマクラブ]

映画界最大のお祭りとされるアメリカのアカデミー賞の発表があり、前評判で
外国映画初の作品賞受賞か?と言われていた「パラサイト 半地下の家族」が
作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の四部門で受賞しました。



国際長編映画賞についてはカンヌ映画祭、全米映画俳優組合賞など多くの受賞
を積み重ねている「パラサイト 半地下の家族」=以降「パラサイト」で確定
という意見が多かったものの作品賞はさすがにアメリカ映画になるでしょうと
言われ、監督賞が獲れたらアジア初の快挙になるから、それでも十分に歴史を
変える偉業だと言われていましたが、結果として作品賞、監督賞、脚本賞だと
いうことで、脚本も書いているポン・ジュノ監督の完勝という結果でした。


半地下に住む失業中の家族が、いろいろな策略を巡らせてIT企業の経営者の
邸宅に潜り込む(寄生)するまでの過程はブラックコメディで、社長の家族が
お泊りに出かけた後で家族全員が豪邸で酒盛りを始めた後は一転してスリルと
サスペンスの展開になり、豪邸の地下室の秘密が明かされた後は…ここからは
まだ観ていない人のために書きませんが、途中で中だるみすることなく最後に
向かって予期せぬ展開が一気に押し寄せてくる映画で、理屈っぽくないものの
世界の資本主義社会で起きている格差を描き出しています。





ポン・ジュノ監督の映画は「グエムル 漢江の怪物」でも「スノーピアサー」
でもクライマックスの部分で残酷な死に向き合う描写がありますが、この作品
の中でも大切な家族が封印を解かれた秘密の存在によって暴力を受けるという
不条理が描かれ、その不条理が起きたことによってもう一つの家族にも危害が
及ぶという連鎖反応が展開して、新たな秘密が出来ていくという無限連鎖的な
ストーリーになっているのでスッキリとは終わらない余韻の残る映画です。

1月10日から公開されているので、そろそろ公開終了の時期になっているとは
思いますが、アカデミー賞を獲得したことでもうしばらくは延長になるのでは
ないかと思いますので、まだ未見の人は映画館に観に行ってください。



最初は「シュリ」で知ったソン・ガンホも韓国の名優と呼ばれるような存在に
なりましたが、刑事から弁護士まで、なんでもできる演技力があり韓国映画を
代表する俳優をなのですが、「国家に反逆する俳優」としてブラックリストに
載せられていたと告発があり、別の罪状ではあるものの朴元大統領が退陣して
罪に問われたおかげでパラサイトの撮影を中止にされることもなく、海外でも
上映が出来てとても良かったと思います。

前にも書きましたがソン・ガンホの映画では「タクシー 約束は海を越えて」
を是非観てもらいたいです。



韓国の映画が進化を続けているのに対して、政権与党の意に沿わない内容だと
文化庁の補助を突然打ち切ったり、政権に尻尾を振るジャニーズ事務所だとか
LDH、吉本興業のまともに演技も出来ないようなタレントを主役にした映画
を上映し続けている日本映画が衰退するのは当然でしょうね。

是枝裕和監督や山田洋次監督など、ごく一部を除いたら政権を批判的な視点で
描くことの出来る監督もいないのですから、日本を含めた社会問題など世界に
発信できるわけがないですからね。イーグルスの「ホテルカリフォルニア」の
ようにスピリットは一昔前に切らしてしまったような感じです。


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青い森のヨッチン

ATG時代の日本映画が懐かしいです。
アニメやコミックスを原作とした焼き直し映画ではなくオリジナル脚本で勝負できる作家さん(監督や制作者)がたくさん出てきて欲しいです。
by 青い森のヨッチン (2020-02-12 14:33) 

suzuran

青い森のヨッチンさん:
コメントありがとうございます。

日本アートシアターギルドですね。
大島渚、若松孝二、大森一樹、新藤兼人、森田芳光など、ほとんどの人が
彼岸の人になってしまいましたが、しっかりとテーマのあるオリジナルの
映画を作ってきた映画人の作品が見られましたね。

映画を文化として捉えて、政治や社会に対するメッセージを時の政権の
意向で表現に問題があるなんて馬鹿げたことを言うようなくだらない
政治家風情が表現にも一定の規制が必要なんて言っている国ではATGの
作品のような良質な、そしてマイノリティーの目線で描かれた映画は
絶対に出てこなくなってしまうことを懸念しています。

韓国で朴大統領が失脚したように、映画の表現に規制をかけようとする
政権が崩壊して、もっと自由な表現が出来るようになることを期待します
by suzuran (2020-02-13 00:19) 

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