映画館がポルノ映画を上映する条件 [シネマクラブ]
現在のAV(アダルトビデオ)のように女優が全裸になることもなく、実際に
性行為をするわけでもないファンタジーとしてのアダルト映画として最盛期は
全国の映画館で二週間ぐらいのペースで新作が上映されていましたが、過激化
するアダルトビデオに内容面で対抗できるわけもなく次第に衰退して表舞台で
残ることはありませんでした。
ところが、ロマンポルノ45周年で「ロマンポルノ・リブート」という企画が
動き出して、心筋梗塞を発症して現在はまだ療養中ですが、福島の原発事故を
テーマにした「希望の国」やヤクザが映画を作るという「地獄でなぜ悪い」の
園子温監督など、日本の若手を代表する監督たちが再び、ロマンポルノを製作
するということがありました。
実は、にっかつ=日活で製作されていたポルノ映画はアンダーヘアは見せない
などの猥褻表現の部分以外にもいろいろな規制と言うか条件が設定されていた
ことは割と知られた話で、そのような厳しい条件下で低予算でありながら一定
の収益を挙げなければならない映画を作ることで若手の映画監督は映画の技法
を学び、後に名監督と呼ばれる存在になったわけです。
最近はネット配信や裏DVDで、無修正AVやインディーズAVが普通になり
一般のAVでも擬似ではなく、実際に性行為をする作品が大半になり過激路線
を一直線という感じですが、逆に昔の日活ロマンポルノのように性行為以前に
股間に前張り(両面テープで肌色の布を張って股間を覆い隠すもので、ドラマ
の撮影や一般映画の官能シーンでは今でも使われています、女優が前張りなし
の体当たり演技なんて書かれている時は全裸で撮影したということですが肌色
の下着を着けている場合がほとんどのようです)をして、撮影現場においても
股間を露出するようなことはなかったみたいですね。
AVの結合シーンなど、冷静に見ると結構、醜悪でグロい(男優が不細工だと
特に冷静になってしまいます)ですし、決して美しいものではないですからね
あくまでも女性を美しく、それでいてエロティックな存在として描こうという
昔のピンク映画の方が想像力が刺激されて女性にも見やすいと思います。
実際に行為をしない、実際に感じるわけもないという撮影条件の中で絶頂感を
表現する演技をしなければならない男優、女優、そして観客の性的興奮を高め
満足感を与えなければならないというミッションがあるので、監督の演出力と
いうのは当然磨かれるわけで、現在の著名な映画監督の中にもロマンポルノの
監督出身とか、独立系のポルノ映画を監督していた人たちがたくさんいるのも
当然と言えるかも知れません。
ある意味、恋愛映画としても鑑賞に値する秀作も一本300万円の予算枠の中で
作られていたのが実際のところで、一般映画と比べたら10分の1からさらに
差がついて100分の1ぐらいの予算だったわけです。
冒頭に書いたポルノ映画の製作の条件というのは15分に1回の濡れ場(普通
に濡れ場という表現をインタビュー等でも聞きますが、映画の中の性交シーン
はなぜ濡れ場というのかは知らないです。)を作り、1本の映画に三人の女優
を登場させ、上映時間は約1時間以内でまとめるようにしないと認められない
と言うか、映画館で上映してもらう最低条件になっていたようで、監督の技量
が高くなければ上映さえしてもらえなかったのがポルノ映画で、製作側よりも
興行側の方が強気だったことが伺えます。
ちなみに香港では3D技術によって、女優がすぐ横にいるように見える映像の
官能映画が作られる予定がありましたが、内容の充実よりも小手先の立体映画
の技術に注力したためか公開しても動員が期待できないということで、上映が
行われないまま消えて行ったということもあり、ただ単にきれいな女優が全裸
になって性交シーンを見せれば客が入るというものではないことが、図らずも
実証されたということになります。
ポルノ映画が元気があった頃に演出力の高い監督が多く輩出され、性の商品化
とか必要以上にポルノ映画の製作に過敏になっている現在は、低予算で確実に
収益を挙げる映画を作る修行が出来にくい環境にあるように思われ、次世代の
監督を育成することが出来ていないように感じられます。
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