秋の味覚の代名詞・鮭の話 [限定・季節の食材]
迎えつつあるというか、すでに寒いぐらいのところもあります。
北海道のお土産屋さんをのぞくと、ほとんどのお店に「鮭を咥えたクマ」
の木彫りの置物が売られていますが、一般的なイメージとしては北海道と
いえば鮭とクマが象徴的なキャラクターになっているような気がします。
今回のテーマとして選んだ鮭は、北海道だけではなく、東北や上越地方や
北陸の一部地域でも水揚げされていて、中部以北・以東の日本においては
マグロやアジ・サンマと並んでよく食卓に登場する水産物ですね。
最近はどうかわかりませんが、基本的に関西や九州はブリ文化圏とされて
いて年末も塩鮭よりは塩ブリと言われてきて、次代が変わってもその辺の
事情はそんなに変わっていないと思います。
国内の消費地の線引きが現在ではどうなっているのか水産部門から離れて
もう数年なので今一つ読めませんが、東日本ほどは鮭を利用しないのは、
多分、変わっていないと思います。
大部分の消費者の方は、鮭といえば、色々な食材が美味しくなる“秋鮭”
の時期が旬だと思われていることと思いますが、そのあたりのことから、
鮭の話を進めて行きたいと思います。
北海道で捕れる鮭は大部分がシロザケという種類の鮭で、皆さんもご存じ
のように、川の上流で孵化してから4cm程度の幼魚になるまでは生まれた
川で過ごして、その後川を下って海に出て、3年~6年ほどの年月を経て、
生まれ故郷の川に戻って産卵行動をするという一生を送ります。
どうして、生まれた川がわかるのかという理由は謎とされていましたが、
地磁気を読み取り(感じ取り)、ある程度の方向を解析して、最終的には
生まれた川の水の匂いで判別をする、という推測が現在のところは主流と
なっているようです。
6月頃から夏頃にかけて、東北地方や北海道の沖合いで漁獲される鮭を、
時鮭やトキシラズという名前で呼び、脂の乗った本来の意味での旬の鮭と
して高級食材として高値で取引されています。
この時期から二ヶ月ほどの間を開けて、故郷の川に帰ってきたものを秋鮭
とか、秋味と呼び、食欲の秋・味覚の秋と重ね合わせていかにも“旬”で
あるかのように喧伝されますが、この時期の鮭はすでに子孫を残すという
仕事に精一杯で、栄養は卵に回されていますから、鮮魚として購入しても
あまり美味しくはありません。
脂が乗っていて美味しい秋鮭と表示されている店舗もたまに見かけますが
かなり沖合いで獲れたものならともかく、沿岸の刺し網や定置網で獲れた
魚体に脂が乗っているとは思えません。
不思議に思った時は店員に納得の行く説明をしてもらいましょう。
基本的に秋鮭は、味噌味でちゃんちゃん焼きにしたり、クリームシチュー
に入れたりしてコクをプラスして、ちょっと濃い目の味付けにしないと、
魚自体の味だけでは物足りないということになってしまいます。
そのような理由もあって、秋鮭の大部分は塩加工をして新巻にしたり塩鮭
として売られることが多くなっていますが、生魚としては脂が不足気味の
秋鮭でも塩漬けにすることによって美味しくすることが出来ることを経験
によって習得した先人の知恵と努力は凄いなと単純に思います。
秋鮭の中でも、河川の遡上をはじめたものは、婚姻色が出るため“ブナ”
と呼ばれますが、この状態になっている場合には、すでに絶食していて、
衰弱した状態で浅い川の川底や岩などに身体を打ちつけています。
魚体は疲れ、打身や傷が至る所にありますので切身として売るということ
も難しいほどの状態ですから、ソーセージや鮭フレークなどの加工品や、
養殖魚の飼料原料などに回されたりしています。
というような訳で鮮魚として一番美味しい鮭が味わえるのは夏ということ
になりますが、料理の素材としてならば調理方法と味付の仕方次第で秋鮭
も充分に美味しく食べられます。
魚本来の味の旬なら夏、イメージも含めた鮭の旬は秋という感じで、旬が
二回ある貴重な魚という見方も出来ますよね。
生鮭の料理法というと、実はあまり思い浮かばないという人も割りと多い
のではないかと思いますが、塩鮭は焼くだけですからね、もっとも簡単で
美味しく食べられる鮭の定番料理法だと思います。
量販店の店頭で売られている鮭は、大別すると辛塩・中辛塩・甘塩という
三種類の表示がありますが、其々の辛さはどのように違うのでしょう。
現在は、塩鮭の大部分は塩水加工という方法で塩味の調整をしながら製造
されていますので、塩鮭の塩辛さの指標は、この調整された塩水の濃度で
表されています。
あくまでも標準的な濃度(製造加工業者により多少の差異があります。)
ですが、3%程度だと甘塩になり、5%で中辛塩、7%を超えると辛塩と
表示されるのが一般的だと思われます。
人にはそれぞれに好みがありますから、塩辛いのが好きな人を対象とした
10%を超える大辛という製品もありますが、これだとさすがに塩辛いので
焼くと表面に塩が浮き出てきて固まることもありますし、あまり高頻度で
食べると心臓病や腎臓病、脳血管障害の心配もあると思いますので、稀に
昔みたいな塩鮭が食べたいなと思った時に食べる程度が適切ではないかと
思います。(年齢を感じる表現だと自分で思いました。)
塩辛い鮭がどうして昔みたいなのか、という話なんですが一昔前の塩鮭は
捕れたその場(漁船の上)で、鮭をドンドンさばいて内臓を抜き取って、
お腹の中に塩を詰めて積み上げていったわけですね。
そのような加工方法から鮭の山漬けと呼ばれ、昔ながらの塩鮭が好きだと
感じている人にはお勧めの加工方法で作られた塩鮭だと思います。
実際にこのような製法で作った塩鮭は、本当にしみじみ塩辛くて、薄切り
の一切れでも充分にご飯のおかずとして通用したものでしたが減塩を中心
とした健康ブームによる塩離れや山漬けという製法そのものが沖合いでの
非常に厳しい労働になるために、科学的に塩分調整が出来て工業的に加工
することが塩水漬けの塩鮭が考案され、現在では、それが標準的の塩鮭と
して流通するようになったわけです。
簡単に製造方法を見分ける方法としては、塩水漬けのものは魚を輪切りに
した切り身ではなく半身の魚体をスライスしていますから見た目ですぐに
わかると思います。
魚体をそのまま輪切りにしたものは、腹側の部分が最も塩辛くなっていて
お腹の中に塩が詰められていたことが容易に分かりますので、年長者の方
ほど買い求める割合が高くなる食材です。
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