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星守る犬【2011年・日本映画】U-NEXT 見放題 [シネマクラブ]

名優・西田敏行さんの突然の訃報ということで、釣りバカ日誌の話を書こうかな
と思いましたが、とりあえずは「おとうさん役」で主演していた「星守る犬」の
記事が過去にありますので、再掲することにしました。



映画自体は全然好きな内容ではなかったのですが、カテゴリー的には喜劇映画や
ユーモラスな役柄で本領発揮するタイプの役者さんだと思われる西田敏行さんが
ここまで追い詰められた役を演じて、とことん暗い映画になったのは、演技自体
の力だということを今になっても思います。

古い映画なので、映画の最後の部分にまで言及(いわゆるネタバレ)しています
ので、DVDを借りて観ようかな、と思っている人は読み飛ばして下さい。


映画の宣伝用のキャッチフレーズは「望みつづけるその先に、きっと希望がある
と思う」ということになっていましたが、映画が進むにつれてドンドン夢も希望
もなくなって暗い気持ちになる映画で、これだけ望みが裏切られて、周囲の人々
が冷酷な冷血漢にしか見えなくなる映画も珍しいと思いました。
当時、話題にはなりましたが映画館のお客さんは半分ぐらいの入りでした。

「星守る犬」という言葉の意味は、どんなに念じても叶わないのに願い続ける人
という意味があると映画の中で説明していましたが、西田敏行さんが演じていた
おとうさん(この映画の中では主役のおとうさんに名前がありませんでした)が
大切にしている犬と一緒に日本を移動した道中は、決して「希望に向かう旅」と
いう前途洋々な明るいものではなく「破滅に向かって真っ暗な道を彷徨う旅」で
あったわけで、望みつづけるその望みとは、一体なにを差しているんだろう?と
ずっと映画を見ながら考えていましたが、最後まで答えは出ませんでした。

真面目に働いていた会社を口頭で簡単に解雇されるという姿に、現代の問題点を
投影しているつもりかも知れませんが、突然の解雇通告など法律の上では無効で
あるわけで、無知な経営者がこの映画を見て、余剰人員はポンポンと肩を叩けば
辞めさせられるなんて考えたらとんでもない話ですし、ただ黙ってそれに従って
身を引くのが良くも悪くも日本人だなんて思われたら冗談じゃないです。

心臓に持病があり、仕事を失っても再就職の目途も立たずに失意のどん底状態の
夫に対して一方的に離婚届けへの押印を迫る妻の姿も、唐突な印象がありますし
「あなたを支える気にならないの」と離婚の理由を述べている部分も妻の一方的
な感情の発露だけであって、突然の首切りの挙句、再就職もままならない状況の
夫を残して私は実家に帰ります、という流れには全く共感ポイントはないです。

原作では妻が財産分与を要求して家財を売り払わせた挙句、なんだかんだと理由
を付けて大半の財産を持って出て行く、という悪魔のような悪妻の設定でしたが
さすがに映画ではその背景の部分は細かくは描かれていませんでした。

意図しているのか、結果としてそうなったのかは説明がありませんでしたが死出
の旅路で出会う人たちは、一様に貧乏臭く、生活に疲れている様子でした。

普通の人が、普通に生きていくことの難しさを表現しているのかも知れませんが
知人の借金の保証人になって店を取り上げられてしまう商店主とか、親から虐待
を受けていると思われる少年が万引きをしようとするところをおとうさんの機転
によって救われたにも関わらず、財布から有り金を全部を抜いて消えてしまうと
いうオチになっていたりして、随所に救いがなさ過ぎます。
出会う人全てが貧乏神みたいな話になっていました。


何故か、中国語の解説が入った動画ばかりになっています。
中国では受け入れられたのかな。

旅の途中で一緒に旅をしている犬のハッピーを、レストランのオーナーに託そう
としますが、置いていこうとしたもののワンワンと鳴き続けるハッピーを置いて
行くことが出来ずにフェリーに乗って北海道へと旅を続けます。

北海道に着いたものの財布の中は空っぽですから、自暴自棄状態でキャンプ場の
熊笹の中に車で突入し、車の鍵を捨て免許証を焼き払って、身元が分かるものを
全て消して、一人で死ぬことを決意します。
最期の時を迎えて死の恐怖をハッピーに語りながら結局、命が潰えるわけです。

おとうさんが死んでから半年後、身元不明者の白骨死体が車の中から発見されて
寄り添うように死んでいたハッピーも発見され、映画の冒頭のシーンと繋がって
白骨死体の死亡推定時期は半年前、犬の死亡は数日前という検視結果が出て犬は
飼い主が亡くなった後も半年間寄り添っていたという悲しい物語は終わります。
どう贔屓目に見てもこの映画は犬が可哀そうすぎます。

とにかくなにもかも一人で考え、誰の助けを借りることもなく、犬と一緒に国内
彷徨い続けた揚句、結果として犬を道連れに死んでいくという映画でした。
映画が終わった後の「明日に繋がる明るい気持ち」など全くありません。

生活保護を申請するとか、ハッピーが一発芸を披露して人生大逆転とか、なにか
夢を描ける映画にはできなかったのでしょうか。
事実はそんなに優しくないかも知れませんが、映画=フィクションなんですから
人生はそんなに四面楚歌なばかりではないというストーリーを見たかったです。


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